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一条ゆかりら少女漫画界レジェンドの裏話を『純情クレイジーフルーツ』松苗あけみが語る

一条ゆかりは王道にいながら革命を起こしてきた

「THE一条ゆかり 集英社デビュー50周年イラスト集」集英社

「THE一条ゆかり 集英社デビュー50周年イラスト集」集英社

小田: いや、デビュー前から一条先生や内田善美先生のようなレジェンド作家の生原稿を見られる状況にあったんですよね? 普通の人ではないです(笑)。 松苗: ほかの仲間だと、アシスタントを頼まれても、「恐れ多くて行けない」と遠慮していましたけど、私は向こう見ずで(笑)。仕事が終われば、あこがれの先生の生原稿を見せてもらえるんですから、行きますよ!
内田善美さんの生原稿。トーク当日、松苗さんがきたがわさんに見せるために持ってきたそう(画像:きたがわ翔さんTwitter @kitagawa_sho より)

内田善美さんの生原稿。トーク当日、松苗さんがきたがわさんに見せたくて持ってきたそう(画像:きたがわ翔さんTwitter @kitagawa_sho より)

きたがわ: 前に一条先生とは、友人の萩原一至と3人で飲んだことがあります。すごく気さくでおもしろい方でした。 松苗: いい女でいて男勝りですね。あと根性もすごい。付録の130ページ長編シリーズとか、大変な仕事量! 原稿を落としてしまったのは、盲腸の時くらいだったはずです。 小田: 弓月光先生、有吉京子先生など手伝っている方も豪華でした。 松苗: 一条先生が70時間くらい寝ていない時、聖悠紀先生が手伝いにいらして、一条さんの肩を揉んだりしていました。「悠紀ちゃんすごいじょうず~♪」とか言ってましたね。
一条ゆかり展

2019年開催された「一条ゆかり展」

きたがわ: 今考えると『りぼん』に『砂の城』が載っていたのが驚きです。昼ドラみたいな大人の世界なのに。 松苗: 『りぼん』としては、ハイブロウになったマンガ家には退(しりぞ)いてほしかったのはあったと思うんです。でも一条先生は不死鳥のように何度も復活して、『有閑倶楽部』が売れたんです。 小田: ずっと王道にいながら革命を起こしてきた。ご本人は「王道なんか描いたことがない」とおっしゃってますけど。
一条ゆかり『さらばジャニス』集英社

一条ゆかり『さらばジャニス』集英社

松苗: 『さらばジャニス』は、女の子の心を持った男の子の話で、オススメです。まだ医者もこういった話をしていない頃なのに、マンガにしています。こういう攻めた作品は『ぶ~け』では、内田善美さんや吉野朔実さんが後継者だったんじゃないかなと。
吉野朔実さんの生原稿。(画像:きたがわ翔さんTwitter @kitagawa_sho より)

吉野朔実さんの生原稿。こちらも松苗さんが当日持ってきたもの(画像:きたがわ翔さんTwitter @kitagawa_sho より)

小田: 内田先生は作品が圧倒的です。今回の松苗さんのコミックエッセイで、パースをすごく遠くから取っていたシーンが印象的です。 松苗: 『星の時計のLiddell』の図書室ですね。6畳と3畳のアパートに何人も集まって泊まりこんで描かれていました。 きたがわ: 大ファンのひとりとしては、『空の色ににている』をもっと大きな判で読んでみたいですよ。『ひぐらしの森』とか、なんて繊細な世界なんだろうと思います。

「少女マンガに花がなくてどうするんだ!」目立つことにこだわった

松苗あけみさんのカラー原画(画像:きたがわ翔さんTwitter @kitagawa_sho より)

松苗あけみさんのカラー原画(画像:きたがわ翔さんTwitter @kitagawa_sho より)

松苗: 当時は連載ペースの融通をきかせてくれない時代だから、大変だったと思います。まるで女工哀史というか、がんばってしまう方ほどキツくなる。 小田: 20代で名作を描かれている。松苗先生もそうでした。 きたがわ: 当時僕らが投稿していた頃は、原稿用紙の内側の基準枠線(縦27cm×横18 cm)からあまり絵をはみ出さないようにと言われていたんですが、『ぶ~け』の松苗先生は思いっきりはみ出ていた(笑)。それで、ページに華があったんですよ。
松苗あけみさんのカラー原画(画像:きたがわ翔さんTwitter @kitagawa_sho より)

松苗あけみさんのカラー原画(画像:きたがわ翔さんTwitter @kitagawa_sho より)

松苗: 少女マンガが割とゆるかったのかも。私はハデにしないと目立たないって考えていて、たとえ「花をしょってるみたい」とディスられても、「少女マンガに花がなくてどうするんだ!」と。私が目立つことにこだわったのは、最初に読んだのが少年マンガだったからと思います。
松苗あけみさんのカラー原画(画像:きたがわ翔さんTwitter @kitagawa_sho より)

松苗あけみさんのカラー原画(画像:きたがわ翔さんTwitter @kitagawa_sho より)

きたがわ: 今こそ松苗先生のような華やかさが求められていると思います。花しょってていいんですよ! 一時期、大友克洋先生の影響でスタイリッシュな流れになりましたけど、『ベルサイユのばら』で、オスカルの目立つ登場シーンを見ると、やっぱマンガってこれだよなと思うんです。
松苗あけみさんのカラー原画(画像:きたがわ翔さんTwitter @kitagawa_sho より)

松苗あけみさんのカラー原画(画像:きたがわ翔さんTwitter @kitagawa_sho より)

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『純情クレイジーフルーツ』は少女マンガをディスっている?!
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