星野源のファンならば、意図を正確に理解したでしょうが、それ以外の人からしたら、漠然とまた元気づけられたなぁ、で終わってしまう。下手すれば、もっと背中を押してもらえたぐらいに感じているかもしれません。それほど、スムーズに誤解される心地よい曲として生まれ変わったわけです。
「Born in the USA」(ブルース・スプリングスティーン 1984年)が、どさくさ紛れに愛国歌になってしまったのと似たような空気を感じました。冷静さを失った社会状況も、拍車をかけているでしょう。
このように、歌詞と音楽が反作用しあう効果を、星野源が意地悪く狙っていたかどうかはわかりません。そうすることで、もっと褒められてしまうために、自らの真意が伝わらない鬱屈を抱えているのかどうかも、知る由はありません。
それでも、非常事態にもかかわらず、あえて星野源は真理を問いました。コロナがあろうとなかろうと、逃れることのできない課題を突きつけました。
ひとりのソングライターとして、一矢を報いてみせたのだと思います。
<文/音楽批評・石黒隆之>