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星野源が紅白で歌った“人間にうんざり”という厳しいメッセージ

 コロナ禍にあって、無観客で行われた昨年の紅白歌合戦。医療従事者への感謝や、ままにならない日々を送る人々にエールを送る温かな雰囲気は、総じて好評だったようです。  そんな一致団結ムードに、ピリッとスパイスを効かせたのが星野源(39)でした。昨年4月、緊急事態宣言下のステイホーム期間中に自身のInstagramに投稿され、多くの人がコラボ動画をあげて社会現象にもなった「うちで踊ろう」。その紅白バージョン「うちで踊ろう(大晦日)」をバンドアレンジで披露しました。
星野源公式サイト

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紅白バージョンの歌詞で飛び出した、厳しいフレーズ

 紅白のために新たに作られた歌詞は、少なからぬ緊張を帯びていました。  昨年4月の時点では、<全ての歌で 手を繋ごう 生きてまた会おう 僕らそれぞれの場所で>という希望に満ちたメッセージだったところに、2番・3番では突如として人間に絶望しているかのような、厳しいフレーズが追加されていたからです。  <常に嘲(あざけ)り合うよな 僕ら “それが人”でもうんざりださよなら>とか、<瞳閉じよう 耳を塞ごう>とかの歌詞は、明らかに初期バージョンとは異なるメッセージを含んでいるはずです。  そして極めつけは、<生きて踊ろう 僕らずっと独りだと 諦め進もう>。“離れていても、心はひとつ”的な綺麗事とは対極の真理を、淡々と吐露する(1~3番の歌詞は星野源が自身のInstagramに掲載しています)。
 つまり、星野源は、今回の紅白の趣旨を鮮やかに裏切ってみせたのですね。にもかかわらず、演奏が終わったあとの司会陣は「素晴らしい!」と、お決まりの感動トーン。なかなかシュールなシーンでした

曲自体は“癒し系”で、不穏さに気づかない?

 けれども、そんな反応になってしまうのも仕方ないかもしれません。この「うちで踊ろう(大晦日)」の恐ろしいのは、音楽自体は極めてフレンドリーで、ハートウォーミングに聞こえるところ。歌詞に反して、全てが癒しだと錯覚してしまう作りになっているのですね。  星野源の楽曲全般に言えることですが、まず何を置いても彼の言葉が一言一句伝わることに重点が置かれている。音楽を通じて彼のメッセージを受け取りたいという社会的な機運が、かつてないほどに高まっている。そのリクエストに応えるための曲づくりを心がけていると言えます。  改めて「うちで踊ろう(大晦日)」を聞き直すと、まるで童謡のワンフレーズを鼻歌でループしているように素朴な構造だとわかります。これが、昨年4月に発表された初期バージョンにバッチリとハマった。身も心も折れそうなところ、シンプルなメロディと、真っ直ぐなメッセージに救われた人も多いことでしょう。  ところが、ここで逆のメッセージを発したとき、不穏な消化不良が起きます。曲全体の朴訥(ぼくとつ)さはそのままに、唐突に聞き手を突き放すようなフレーズが乗っかる。すると、本来ならば“ちょっと頭冷やせよ”といった警鐘を鳴らすはずの歌詞が、そのまま“素晴らしい!”に回収されてしまう。
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星野源が狙ったのかはわからないが…
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