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「森喜朗はかつて私たちのセクシーアイドルだった」ゲイから見た“女性蔑視発言”

巨大イベントの五輪に老人の生きがいをトップに掲げる日本

 月日は経ち、私は新しいセクシーアイドルに夢中になり(カンニング竹山とか)、森元首相のことは海馬の奥底へと消え去っていた。  そしてふたたび世間に森喜朗が大フィーチャーされたのは、先のラグビーワールドカップ、そして今回の東京五輪であることはいうまでもない。私はひさしぶりに見た彼の姿に驚いた。  かつての恰幅(かっぷく)の良い偉丈夫(いじょうふ)のイメージはまったくない。頭蓋骨そのままのくぼんだ顔。スーツのほうが実態なのではないかという体躯。政治ライターとして言わせてもらう。 「ぜんっぜんイケねえ!!!!!!」  いや、フォローすると、オケ専方面のゲイにはこれはこれで人気があるかもしれない。ちなみにオケ専というのは、棺桶に片足突っ込んだ人が好みだという、フケ専のハードコアバージョンである。LGBTの多様性に震えるがいい。
(画像:首相官邸ウェブサイトより CC BY 4.0)

2019年5月19日安倍総理(当時)を官邸に表敬する森喜朗元会長(画像:首相官邸ウェブサイトより CC BY 4.0)

 とにかく、かつてのアイドルの劣化に慄きながらも、私は単純にこういうことを思っていた。 「人は、こんなになるまで働き続けなければならないの?」  中学の頃から将来の夢を聞かれるたびに「定年退職」と答え(結局就職できなかったので夢のまま)、現在週三のバイトで過労死しそうになっている私には信じられない。金が欲しいから仕方なく働いてるわけではなかろう。功名心のため、というのも違う気がする。おそらく、生きがいなのだ。やりがいなのだ。人生の最後をかけた大仕事なのだ。  高齢者を馬鹿にしているわけではない。私は、東京五輪という、我が国はもとより世界各国の多くの政府・会社・組織・個人を巻き込んだ巨大イベントに、80になろうかという老人の生きがいをトップに掲げてもってくる日本のシステムに、かつてのアイドルの劣化と同じくらいに慄(おのの)いたのだ。小田嶋隆氏が「先が短い老人をトップに持ってきたのは、のちに起こるであろうすべての問題をうやむやにするためではないか」という身もふたもないことを書いていたが、否定はできない。  そして、20年前に彼が首相の座に就任したときと似たようなことを思ったのであった。 「愚直な方だから、いろいろな面で大丈夫かしら?」  相手がご高齢になったため、やはり表現が多少マイルドになってしまう。小田嶋氏のおっしゃることはなかなか正しい。  そして私の政治ライターとしての勘は今回も当たることになる。みなさんも顛末はご存じの通り、2020年東京五輪が当初の予定を大幅に上回る地獄絵図の中、森喜朗は組織委員会会長の座を退いたのである。

「森ちゃんはセクシーなだけで頭が空っぽな金髪ギャルなの?」

 と、ここまで書いたものを読み返して、自分のあまりのひどさにめまいがしている。  まるで、女性を性的対象としか見ていない男たちをそのままネガポジ反転しただけではないか。これはある意味、森さんの発言よりもはるかにひどい。  アキラ(私の本名)、あなたにとって森ちゃんはセクシーなだけで頭が空っぽな金髪ギャルなの? ノーマ・ジーンのことも知らずに彼をセクシーアイドルとしてのみ消費し尽くすの? マリリン・モンローの悲劇は、そんなあなたみたいな殿方が引き起こしたんじゃない?  そんな自分の内なる声に耳をかたむけ(狂人)、とりあえず森喜朗のWikipediaに目を通した。ゼミのレポートに追われる大学生レベルの行動だが、結果、なんとなくいろいろと腑に落ちた気がしている。
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森喜朗はきわめてホモソーシャルの人なのである
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