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フェミニズム本を作った男性編集者に感じた、“違和感”の正体

「あのとき、あの女性に嫌な思いをさせてしまった」

通勤 職種にもよるが、女性は職場において「オフィスカジュアル」を強いられる傾向がある。私も会社員時代、私服は少しロリイタっぽい甘めの服装を好んでいたが、仕事着としては 主にGUで安くて無難な服を買って着ていた。  当時ヴィジュアル系バンドの追っかけをしていたので、仕事後にライブに行く際は予め着替えを持って出社し、仕事後、お気に入りのワンピースに着替えていた。私の場合、元々好きな服装が事務職としてはそぐわない格好だったので自重しており、男性からの論評は考えたことがなかった。  でも「同じ環境で働く上で、男性からの論評を気にしている女性がいること自体、男性に権力がある証だ」と原口さんは主張する。女性は住む場所も安全面を考慮しないといけないし、服装も男性の目を気にして仕事後に着替えるし、化粧品や生理用品にもお金がかかる。  一方で多くの男性は弱者になったことがない。でも、老人になると誰でも弱者になる。だから「弱者について理解するなら、フェミニズムを学ぶことが唯一の手段だ」と原口さんは思ったという。そして、自分が今までパワーのある側にいたことに気づいた。「あのとき、あの女性に嫌な思いをさせてしまったな」と思うことが今でもある。

男性の方が構造上、権力を持っている

「『茹でガエル』って言うじゃないですか。熱湯の中に放り込まれたカエルはすぐに逃げ出して助かるけど、じわじわと低温で温められて茹でられていったカエルは自分が苦しんでいることに気づかないまま死んでしまう。権力を持っている男性の場合、僕も含め、自分が今苦しいということにあまり気づけないのではないかと思うんです。一方、女性は悲しいことに子どもの頃から抑圧される環境にあるので、自分にかかっている圧に気づきやすい」  男女関係で男性の方が構造上、権力を持っている。原口さんにそう指摘されるまで、それが当たり前過ぎて気づいていない自分がいた。偶然だが、今まで私の仕事相手は男性が多かった。ライター自体は女性の方が多いように感じるが、多くの編集者やクライアントは男性、しかも40代以上の中高年だった。  恋愛の指南本やモテ系の記事を読むと「男性のプライドを傷つけないような振る舞いを!」「些細なことでも褒めるのがモテへの近道☆」といったことが書かれている。これらのアドバイスは明らかに、男女のパワーバランスにおいて女性が下であることを表している。  個人的に恋愛相談をした男性から「『会う時間を作ってほしい』とか、プレッシャーをかけるようなLINEを送るのはNGだよ」と言われたこともあった。そのときは男性ってどれだけプレッシャーに弱いんだ? と若干呆れてしまった。
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猛烈に膨らむ「男に勝ちたい」という欲求
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