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フェミニズム本を作った男性編集者に感じた、“違和感”の正体

元ホモソ編集者の発言に感じた、違和感の正体

考える女性 当初私は「男性のことをもっと知れば女性も生きやすくなるのではないか、だから男性学を学ぶべきではないか」と思っていたが、原口さんはこう続けた。 「確かに、男性だから稼がないといけないという男としての圧は感じていますが、女性が男性のことを知るより、男性が女性の生きにくさを見つめた方が楽なんです。男性性の押し付けから逃れるための一番良い方法は、女性のしんどさを取っ払うことです。そうすると男性の負担も軽くなってくるし、社会全体のためになる。男性が男性の苦しさを解決しようとすると、どうしても自慢話などの競争になってしまうので実はすごく難しい。  これはある種の逃げなのですが、自分自身の苦しさに向き合いたくないんです。多分僕は一生男性性や男性らしさから逃れられないから、男性学は存在するべきだと思います。でも僕は、自分の苦しさを解放できない代わりに、他の人を解放する手伝いができるのなら、そっちのほうがマシです」  なるほど、無理して男性を理解する必要はないのか、と思ったが、ちょっとした違和感が残った。その違和感の正体を紐解いてみると、原口さんは生きづらさから逃げるために楽な方法を選ぼうと、女性任せにしている可能性がある点だ。いや、完全に任せているというわけではなく、「手伝い」という名目で女性の言動を何も考えずに受け入れているだけなのかもしれない。  過去、ホモソ界にどっぷり浸かっていた原口さんがフェミニズムについて考えるようになった変遷のギャップは大きくて、純粋に面白い。目の付け所も頭の回転も良いため、本も売れているのだと思う。要は、フェミニズム的な思考と、手放したい男性性のバランス感覚が絶妙なのだ。  なぜここまで女性が男性に気を遣わないといけないのか、男女の構造を気づかせてくれた原口さんに感謝したい。私はいちいち男性の顔色をうかがわなくてもいいのだ。しかし、原口さんはある意味特殊な例だとも言える。そして彼の話を聞いて、改めて自分は「うっすらフェミニスト」なのではないかと思えてきた。 <文/姫野桂 構成/女子SPA!編集部 撮影(著者近影)/Karma>
姫野桂
フリーライター。1987年生まれ。著書に『発達障害グレーゾーン』、『私たちは生きづらさを抱えている』、『「生きづらさ」解消ライフハック』がある。Twitter:@himeno_kei
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