News

フェミニズム本を作った男性編集者に感じた、“違和感”の正体

猛烈に膨らむ「男に勝ちたい」という欲求

パソコン 原口さんの話を聞いて男女関係のアンバランスな構造に気づいてしまった途端、私の中で「男に勝ちたい」という欲求が猛烈に膨らんできた。仕事でもっと成功したい。女だけどもっともっと稼げるということを証明したい。それと同時に「今、令和だよな。いつの時代の女性の話だよ。現代はウーマンリブ活動が行われていた時代なんかじゃない」と思った。  2019年の東大の入学式で祝辞を述べた上野千鶴子氏は、男女不平等について取り上げた。それに喝采する人がいる一方、「わざわざめでたい日に説教するなんて」と非難した人もいた。賛否両論が巻き起こった祝辞であったが、なぜ東大がこのタイミングで上野氏を呼んだのかを考えると、現代社会の歪みを看破した東大側の策略なのではないか、と思う。  原口さんの話を聞いていると、彼にとってフェミニズムは商売のネタであり、彼自身はフェミニストではないと感じた。原口さんは今でも、バラエティ番組などで女子アナの女性性をネタにしたいじりを観てつい笑ってしまう自分に、「あ、今俺笑ってた」と気づくことがあるという。フェミニズムに出会って完全に生まれ変わったわけではなく、まだ自分の中にホモソ的な要素は潜んでいる。フェミニズムを理解したというより、権力の所在に敏感になったんだろう、と。同世代だとこのような感覚は人それぞれなのかなと思うが、歳下くらいになるとまた変わってくると思う、とも語った。

「権力を持ちたくない」は責任を放棄することでもある

 確かにタレントのりゅうちぇる氏やkemio氏らのおかげで、若者の間で多様性や人権意識が受け入れられたように感じる。しかし同じ若者でも、セクハラをネタにした挙げ句、それを一部のインフルエンサーたちがホモソ的なノリで楽しむ地獄絵図ができあがってしまったレペゼン地球のDJ社長の炎上騒動のように、二極化している。  原口さんは自身の中にまだ息を潜めている加害性のある男性性を恐れてか、「権力を持ちたくない」と語る。権力はできるだけ手放していきたい。でも、仕事柄、権力を持っていた方が本を売り出すときに有利だ。仕事面では権力を持ちたいが、権力を持つと誰かを嫌な気持ちにさせてしまうこともある。しかし、自分も無傷で誰も傷つけないでいることはあり得ない。  一方、プライベートでは権力を持ちたくなさ過ぎて「もっと考えて」と、同棲中の彼女に怒られることがあるという。権力を持たないということは同時に、責任を放棄し、思考を停止させることでもある。当時、原口さんカップルは引っ越しを予定しており、物件を探しているところだったが、彼女ばかりが物件探しをしていたため怒られたそうだ。
次のページ 
元ホモソ編集者の発言に感じた、違和感の正体
1
2
3
4
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ