恋も同じだ。気に入った女性とはなるべく友だちでいたかった。学生時代、恋愛をしたら相手に束縛されて「ひどい目にあった」から。
「週末、何してるのと聞かれただけで、嫌な気分になるんですよ。気が向いたら合ってご飯を食べたり飲んだりするだけじゃ、どうしていけないのか。なぜ先の予定を彼女に教えなければいけないのか。恋愛ってそんなに不自由を要求されるものなのかと悩んでしまって」
結局、「つきあう相手」は不要だと思った。行きずりの恋でいい。本気でそう思っていた。
50歳を目前にして「恋ってどうやってするものかわからない」
ところが半年前、48歳を迎えたころから彼の心境に変化があった。
「なんだか体調がすぐれなくて病院に行ったら、精密検査をしたほうがいいということになったんです。大腸がんかもしれない、と。結局、がんではなかったんですが、ああ、もうそういう年齢なんだなと実感しました。
3年前に父が大腸がんで亡くなっているんです。そのときは人は遅かれ早かれ死ぬものだと受け止めました。ただ、がん疑惑がかかったとき、病気で余命幾ばくもないとわかったら、この人生、後悔するかもしれないと心の底から思って……。そこから少し気持ちに変化がありましたね」

家族をもつのも悪くない。好きな女性と向き合って一緒に歩むのもいいんじゃないか。リョウスケさんは、ずっと友だちに言われてきたことに初めて同意した。
「じゃあ、好きな女性とつきあってみようと思ったんですが、そのとき気づいたんですよ。恋ってどうやってするものかわからない、と。情けないですよね……」
以前なら軽い気持ちでナンパしたりもしていたのに、恋をしたいと思ったとたんにどう動けばいいのか、どう声をかけたらいいのかわからなくなった。結婚相談所にも行ってみたが、「結婚したいというより恋をしたいのだ」と気づいて退会した。結婚ありきの相談所にはついていけなかった。