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「セクハラやパワハラに、なぜ嫌だと言わないの?」と思う人に伝えたいこと

自分の感情を尊重できるようになること

 しかしながら、数年間の精神科への通院とカウンセリングの効果もあり、少しずつ、自分を大事にしようという気持ちや、自分が感じたことを、自分がそのまま尊重してあげようという意識を持てるようにまで回復できたように思える。
怒る

画像はイメージです

 そうすると不思議なもので、「理不尽な扱いを受けた」と思ったらその場で相手に言い返したり反論したりすることが、以前よりもいくらかマシにできるようになったように思う。しっかりと相手に「傷付いた」と伝えられるようにもなったし、相手の感情を無条件に優先する思考パターンから解放されたおかげで、無駄に精神を消耗することが少なくなったのは自分にとって大きな財産であるように思える。  だからこそ最近は、特に自分よりも若い人たちが理不尽な状況に遭遇して「怒っていいのかどうか」悩んでいるとき、それが正当であると思うものについては、なるべく「怒ってもいいと思うよ」と言うようにしている。あるいは本人が希望する場合のみ、代理で口を挟むことも多々ある。

怒れない私を守ってくれた先輩女性

 誰かに「怒ってもいい」と言ってもらえることが、これまでの私にとって背中を押してもらえるきっかけになったことが何度かある。自分のなかにある”怒り”の感情を第三者から認めてもらうことは、自己肯定感を取り戻すことや、自信を付けることにおいて非常に重要なプロセスである。  二十代前半、まだ私が会社員だった時代に、とても頼れる女性の先輩がいた。彼女は管理職であったが、いつも下の立場にある社員たちに目を向けてくれていて、私たちがセクハラやパワハラ、その他諸々の被害に遭っているのを見るにつけ、「あんたは今ひどい目に遭わされている。だから、私が戦って守ってやる」と怒り心頭で先陣を切って相手に切り掛かってくれる、勇者みたいな人だった。自分に自信を持てずに沈黙を貫くしかなかった私はいつも、彼女の勇気と行動力に救われていたように思う。  今年、私は三十になる。当時の彼女とだいたい同い年くらいになった。彼女のように、とまではおこがましくてとても言えないが、自分の後進ともなる若者たちのために、自分が救われたあのときのように、少しでも力添えをしたいと思っている。 <文/吉川ばんび>
吉川ばんび
1991年生まれ。フリーライター・コラムニスト。貧困や機能不全家族、ブラック企業、社会問題などについて、自らの体験をもとに取材・執筆。文春オンライン、東洋経済オンラインなどで連載中。著書に『年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声』 twitter:@bambi_yoshikawa
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