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宿題しない子には「どうして?」より「どうしたの?」。似ているようで大違い

子どもが失敗したときの対処法

失敗は恐れる必要がない

 人工知能には、学習機能がある。成功事例を要領よく取り揃えて学習させると、学習時間は短くてすむ。ときに失敗させて、回路にショックを与えると、しばし“混乱”して、学習時間は長くなる。しかし、戦略センスが格段に上がる。失敗させない人工知能は、「定型業務」は確実にこなすが、「新しい事態への対応力」がいまいちだ。一方、失敗させた人工知能は、新しい道を拓(ひら)くことができる。  当然、人間も同じである。  要領よく詰め込んで、さっさと偏差値を上げて、責務に邁進(まいしん)できるエリートを作り上げるという手もあるが、じっくり時間をかけて、失敗を許し、開拓者・開発者を育てるのも、また、賢母の道である。 息子のトリセツ

〇〇してあげればよかった

 では実際に、子どもが失敗したとき、どうしたらいいか、である。叱ったり、がっかりしないで、と言われると、どうしたらいいかわからないのでは? 「私も、〇〇してあげればよかった」と声をかけるといい。たとえば、模擬試験の前の日、「寝る前にちゃんと用意して。必要なもの、確認してよ」と言ってるのに、朝になって、「たいへん、スリッパが要(い)るんだって!」とか言ってきて、母親をあわてさせたとき。「だから、言ったでしょ!」と怒鳴りたくなるシーンだが、ここはあえて、「ママも、一緒にプリントを見てあげればよかったね」と言いつつ、スリッパを探しに走る。 息子のトリセツ このことばは、失敗を共有することになるので、この瞬間、母は「胸の痛みを分かち合ってくれた人」になるのだ。この世に、胸の痛みを分かち合ってくれる母ほど、大切なものはないのでは? 失敗、しめたもの、である。

「どうして?」を「どうしたの?」に変えよう

対話クラッシャー

 日本の男子は共感型の会話が苦手だ。なぜなら、この国の母たちが、息子相手に共感型の対話をしていないから。特に、息子相手に5W1H型の質問をするのは要注意だ。  5W1Hとは、Who(だれ)、When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように、どう)で始まる質問のこと。5W1Hは、スペック確認の質問。ゴールを目指し、結論を急ぐ、ゴール指向問題解決型の王道を行く話法だ。脳は緊張し、心は一切通わない。私は、いきなりの5W1Hを、対話クラッシャー(つぶし)と呼んでいる。威嚇(いかく)する気がなくても、威嚇したように聞こえるからだ。 息子のトリセツ

たかが、ことば、されど、ことば

「どうして、やらないの(できないの)?」の代わりに、「大丈夫? どうしたの?」を使うといい。「どうして、宿題やらないの?」じゃなくて、「大丈夫? 立て続けに宿題忘れてるけど、どうしたの?」と尋ねるのだ。「どうして、宿題しないの?」は、息子の怠惰を責めているが、「大丈夫? どうしたの?」は外部要因を疑っている。何とか工夫できないか、ともに善後策を測ろうとする優しさを伴っている。「どうして、宿題しないの?」に、「忘れちゃうんだよ」と返されたら腹が立つが、「大丈夫? どうしちゃったの?」に「忘れちゃうんだよ」と返されたら、「忘れないようにするには、どうしたらいいだろうね」と建設的な対話に持ち込める。 「どうして?」と「どうしたの?」、わずかに違う語尾が、母と子の明暗を分ける。たかが、ことば、されど、ことばである。

【Point】5W1H 型の質問はNG

「どうして、宿題やらないの?」 「大丈夫? 立て続けに宿題忘れてるけど、どうしたの?」
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心の対話を交わす話しかけ方6つ
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