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博多大吉「高齢者に気を使わなくていい」の深い背景。M-1で人気漫画のセリフが伝わらない?!

12月18日に開催された漫才日本一を決める「M-1グランプリ2022」(ABCテレビ・テレビ朝日系)は、ウエストランドの優勝という結果になりました。
ウエストランド_代表カット ©M-1グランプリ事務局

ウエストランド ©M-1グランプリ事務局

平均世帯視聴率は、関東地区17.9%関西地区30.1%(ビデオリサーチ調べ)と高く、今も熱い話題になっています。

漫画『ハンター×ハンター』のセリフが審査員に伝わってなかった?!

そんな中、真空ジェシカのシルバー人材派遣センターのネタで人気マンガ『HUNTER×HUNTER』(ハンター×ハンター 冨樫義博作)のセリフ「オレでなきゃ見逃しちゃうね」や、かつてのネタ番組『エンタの神様』(日本テレビ系列)での陣内智則のキャッチフレーズ「笑いのニューウェーブ」の引用について、“審査員にうまく伝わっていないのでは?”という声がありました。
M-1_2022_2番手_真空ジェシカ  ©M-1グランプリ事務局

真空ジェシカ  ©M-1グランプリ事務局

M-1グランプリの審査員を勇退したオール巨人は、近年ゲームのネタなど自身が分からない話題の漫才ネタになることがあり、分からないのに審査することはできないことも、引退理由の一つとして挙げています。 かといって、すべてのジャンルに知識がある審査員もいないでしょうから、なかなか塩梅が難しいところ。この「どこまで受け手の知っている範囲にあわせるか」問題や、審査員のコメントで話題になった“ネタの分数が短いと減点”問題について、構成作家の大輪貴史(おおわ たかふみ)さんに聞きました。 大輪さんは、かつてピン芸人「大輪教授」として活動し、2007年にはR-1ファイナリストに選出されました。現在はお笑い養成所の講師や、複数のお笑い事務所による若手芸人のネタ見せもつとめています。 ――マンガやテレビ番組からの引用など、世代によったり、特定のカルチャーを知らないと伝わらないネタはいかがでしょうか?審査員とのジェネレーションギャップなどもあり今後もより多くなりそうですが…。 <どのジャンルでもジェネレーションやカルチャーの違いが大きくなっていますよね。紅白歌合戦の選出や、新語・流行語大賞にもその問題が出てきているように感じます。 2004年大会の南海キャンディーズの漫才のなかに「これはクリリンの分!」と、ドラゴンボールから引用したようなセリフもありました。この頃に比べて、もしかしたら伝わっている母数が減っているかもしれません。 しかし、本当に心配なのは、「伝わらないこと」よりも「伝わらないと思ってボケの選択肢を狭めてしまうこと」だと思います。若手芸人のネタ見せなどでは、見ている作家から「それ、誰が知ってんの?」「伝わらないから止めたほうがいいよ」といった言葉が出てくることがあります。それで、本当にやりたい面白いことが潰される方が問題だと思うんです>(大輪貴史さん 以下山カッコ内同じ)

博多大吉がヨネダ2000に「説明はいらなかったかな」

――ダメ出しを受けて萎縮(いしゅく)してしまうことはありがちですよね。このような伝わるか否かをどこまで気にするかのバランスは難しいところです。 <そこまでの例ではありませんが、ヨネダ2000の審査の際に、博多大吉さんから「KENZOさんの説明はいらなかったかな」とありました。ヨネダ2000が、本当に補足でそのセリフを入れたのか、リズム的に入れようと思ったのか、その真意はわかりませんが、大吉さんとしては「もっと説明をすっ飛ばしてもいい」と思ったのでしょう> ――大吉さんが「もうDA PUMPって分かっているのに、高齢者に気を使われた感じもあって」と自身ら審査員への配慮を引き合いに笑いを取りつつ「そんなこと気にせずに突っ走ってほしかったな。ヨネダ2000はもっと突き進んだほうがいい!」とアドバイスされてました。先程の萎縮させるダメ出しとは逆に、芸人を伸ばす助言ですね。
M-1_2022_8番手_ヨネダ2000 ©M-1グランプリ事務局

ヨネダ2000 ©M-1グランプリ事務局

<理想を言えば「知らないけどなんだか面白い」が発生するようにするべきなんです。「意味がわからないけど、あの芸人さんが言っているんだから、面白いはずだ!」と思わせる力。 私が子どものころ、コロッケさんの美川憲一さんのモノマネで大笑いしていました。しかし、当時小学生の私は美川憲一さんを知りませんでした。でもなんだか可笑しかった。 お笑いって、それでいいと思うんです。むしろ、お笑いで知ることがあってもいいじゃないですか。若手芸人のネタに若いお客さんが爆笑して、それを見て我々おじさんが知ったかぶりして見栄(みえ)張って笑う、くらいの方が、社会が健康な気がします> ――たしかに、知らないスポーツ選手や映画をネタにしているのに笑うことが結構あります。 <若手芸人のみなさんには勇気を持って、「自分の好きなこと」をやっていただきたい!それがスベったのだとしたら、ジェネレーションやカルチャーの問題ではなく、巻き込む力が足りなかっただけのこと。 これは、お笑い以外のさまざまな仕事に共通するのことなのではないでしょうか?>
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塙&大吉「ネタ時間が短かった」指摘
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