それで気になってくるのが、町田啓太はどんなシチュエーションで、どんな言葉で玄理にプロポーズしたのかということである(精悍な彼女である。もちろん逆からのプロポーズの可能性もある)。ここからは現実とドラマ世界とを一緒くたにする筆者の妄想をどうかお許し願いたい。町田くんの結婚場面が描かれた出演作品を思い浮かべると、やっぱりあの作品しかない。
『チェリまほ』で赤楚衛二演じるもっさりな安達清に、心身ともに完璧さを極めた黒沢優一が思い高まり、「お前のこと好きなんだ」と告白してしまったのが第6~7話にかけてのこと。以降安達は、仕事が手につかず気持ちを整理しようにもできない。黒目がちな黒沢の瞳がまっすぐ安達を見つめる。かと思えば、安達をからかう黒沢は、上唇に若干力を入れていたずらっ子な表情をする。そして去り際にはこう耳元で囁(ささや)いた。
「これ以上一緒にいたら歯止めがきかなそうだから」
たまりませんね。この場面は何度見返しても(と同時に聞いても)よからぬ妄想を掻き立てる。こんな囁き、黒沢よ、これ以上はやめてくれ。あなたの甘い囁きが今となってはすべてプロポーズの言葉にしか聞こえないんだから。

©豊田悠/SQUARE ENIX・「チェリまほ THE MOVIE」製作委員会
最後まで安達が来ることを信じて屋上で待っていた黒沢がお揃いの万年筆を渡すなど、ドラマ最終話版でもプロポーズに近い展開は確認できたが、決定的だったのは、『チェリまほ THE MOVIE~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』(2022年、以下、『THE MOVIE』)のクライマックス。お互いの両親に挨拶を済ませたふたりが息を整え、足並みを揃えて浜辺を歩く場面。
波打ち際で、浜に打ち付ける波を見つめる安達と黒沢。黒沢がポケットからそっと指輪を取り出す。安達の左薬指に静かに指輪がとおる。黒沢の指にも同じように。寝転んだふたりが空高く左手をかかげる。ペアリングが愛の証しを立てるように輝く。
続く場面では、チャペルに立つふたりの姿が。仕立ての良いタキシードをお揃いで着て、満面の笑みを浮かべる。祝福の場面。現実の町田啓太は玄理との挙式を未定にしているけれど、ぼくらはこうして黒沢の姿を借りた町田くんの晴れ姿を一度体験しているわけだからご安心あれ。