心の病気で“暴言”を吐く夫の「最低な言葉」にア然。そして妻は夫を見捨てた
馬場ふみか演じる専業主婦がモラハラ夫を社会的に抹殺しようと計画するドラマ『夫を社会的に抹殺する5つの方法』(テレビ東京系、火曜深夜0時30分~)に新展開が。話題のドラマを、夫婦関係について著書多数の亀山早苗さんが読み解きます(以下、亀山さんの寄稿)。
【前回記事】⇒「お腹すいたと言ったら、父にビンタされた」殴られて育った女性“25年後”の胸のうち
ドラマ『夫を社会的に抹殺する5つの方法』の第9話。茜(馬場ふみか)は、義姉から夫・大輔が解離性同一性障害(多重人格)であると聞き、さまざまな状況から「仮面さん」が大輔(野村周平)であると確信した。夫を社会的に抹殺したいと思っていた茜の気持ちに変化が起こる。
連絡を寄越した「仮面さん」に対し、茜は画面越しに「大輔さんでしょ。一度会って話したい」と呼びかける。仮面さんはあわててPCを切り、「僕は麦原明だよ」とつぶやいた。大輔の別人格の名前だ。
麦原明はもちろん、主人格である大輔を知っているが、どうやら大輔は自分の中の麦原明の存在を明確には理解していない様子。その後、混乱していく大輔に、思わず「ちゃんと病院で専門の医師に診てもらわないと……」とツッコミたくなった。
30年ほど前、ダニエル・キイス著の『24人のビリー・ミリガン』(早川書房刊)というノンフィクションが発売され、大きな話題となった。強盗・強姦容疑で逮捕されたビリーには本人を含め24人もの人格が存在していたのだ。
彼は幼い頃、継父から壮絶な身体的虐待、性的虐待を受けており、その影響でどんどん人格が増えていったという。人間の脳の複雑さに驚愕した記憶がある。
次回は最終回。大輔はどうなるのか、茜はどうするのだろうか。
夫や妻が「こころの病気」にかかったとき、配偶者がとるべき道に「正しいもの」はない。それまでの夫婦関係にもよるし、周りの状況にもよる。
かつて結婚後に、うつ病にかかった妻を献身的に看護しながら仕事もし、ふたりの子どもたちを育てている男性に会ったことがある。彼は、「毎日つらいけど、いちばんつらいのはバリバリ仕事をして前向きな人生を送っていた妻だと思う。彼女がよくなるまでがんばるつもり」と語っていた。その数年後、妻はかなりよくなり、一家には安定した穏やかな日々が訪れた。
だがもちろん、これ以上、一緒にいたら自分が潰れてしまうと判断すれば別れもやむなしというケースもある。
「仕事の多忙さと人間関係のストレスで、夫がアルコール依存とうつ病になったんです。最初はストレスからお酒を過度に飲むようになった。ときには朝からラム酒をラッパ飲みして会社に行くこともありました。鬱々とした気持ちをなんとかしたかったのかもしれません。私も仕事をしていたし、当時は子どももまだ小さかったので、なかなか夫の気持ちにまで気が回らなかった」
そう言うのはアズサさん(仮名・40歳)だ。29歳のとき、3歳年上のヨウタ(仮名)さんと結婚、アズサさんの実家近くで生活していた。夫の様子がおかしくなったのは、結婚して5年ほどたち、夫が昇進したころだ。夫は社内でも期待の大きい若手のホープだったという。

ドラマ『夫を社会的に抹殺する5つの方法』(画像はリリースより、以下同)