「りゅうちぇるへのバッシングが身につまされる」子どもがほしいトランス男性が苦悩する理由とは
もちろん、私はまだホルモン治療をはじめて日が浅く、メリットデメリットを客観的に評価できる段階ではない。それでも、女性と誤解されないだけでこんなにも生きやすくなるとは思いもしなかった。
ピンクを買ったら女って思われるかなと心配しなくていい。髪を伸ばすと女に見えるからと似合わない短髪にこだわらないで済む。女性が選ぶ職だからと避けていた職種や資格も、いまなら自由に選ぶことができるかもしれない。
そして、今なら、パートナーとの間に、子どもを持つ選択肢も、選べるかもしれないーー。矛盾している、と思われるだろうか。
自分を女性と思っていないので、母になりたいとは思わない。ただ、パートナーの子どもを、パートナーとともに育てたいとは思う。夫の子どもを見るためには、私が「母」として夫の子を身ごもるしかないからだ。私の体にはまだ子宮と卵巣があり、男性ホルモンをやめれば子どもを産める可能性はまだある(年齢的にかなり厳しいのだが)。
もちろん、子どもを持つというのは、セクシャルマイノリティの問題以前にとても大変なことだ。男性ホルモンを入れているうえに子どもがほしいなんて、親のエゴと言われることだろう。
実際、「父」と思われることから逃れるために離婚を選んだりゅうちぇるさんへの、たくさんのバッシングを目にした。子を持つうえで、親の性別はいまだに強固なのだ、と身につまされる。
男性器を持って生まれた人なら「父」として、女性器を持って生まれてきた人なら「母」という形でいないと、愛したことにならないのだろうか。そうであれば、私は子どもを授かるどころか、愛する権利もない。
トランスジェンダーと妊娠、出産
