宇垣美里「272kgの巨体をソファに縛りつける脂肪は“人生の業”そのもの」
執念を感じるほどの前向きさと希望への思いから
戯曲を原作としたアパートの一室で展開する室内劇。窓から差す光、移りゆく天気の描写が詩的でチャーリーの心情の変化が感じられた。狭い世界ながら彼の元を訪れる人々との会話から少しずつそれぞれの本心が滲み出し、世界は海原のような広がりを見せる。 フレイザーはもちろんのこと、チャーリーの親友であるリズ役のホン・チャウや娘役のセイディー・シンクなど、救いを求めてあがく彼らを演じる俳優陣の迫力には圧倒された。 人間や人生の良いところも悪いところも、えぐるようにさらけ出す痛切な作品なのに、執念を感じるほどの前向きさと希望への思いからくるチャーリーのラストの行動には凄みと美しさと救いがあった。 『ザ・ホエール』 監督/ダーレン・アロノフスキー 出演/ブレンダン・フレイザー セイディー・シンク ©2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved. 【他の記事を読む】⇒シリーズ「宇垣美里の沼落ちシネマ」の一覧はこちら <文/宇垣美里> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
宇垣美里
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。
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