「SNSで発言力が高いファン=強い」昨今の推し活事情
――1話で雅の推しの愛瑠が脱退し、そのことがスマホ画面に映し出される構図がありました。そのほかにも、ネット掲示板のカットが挟まれるなど、SNSやインターネットを意識させる描写が目白押しですよね。
オガワサラさん(以下オガワサラ):そうですね。特にコロナ禍の真っ只中は、現場がない分「SNSで発言力が高いファン=強い」イメージがついてしまった界隈もあるように感じました。だからSNSが動いている感じは、作品の中でも意識したくて。そもそも推し活に強いも弱いもないはずなんですけどね。
――ストーリーが進んでいく中で“繋がり”(ファンとアイドルがプライベートで関わりを持つこと)について描いた部分もありましたが、その結末は予想外でした。
オガワサラ:そうですよね。あわよくば推しと繋がりたいと思っている方は現実にいると思います。ただその一方で、繋がった先に感じるかもしれないこと、なぜ推しているかにたいする1つのスタンスを描きたかったんです。
――『推しが辞めた』を通してオガワ先生が伝えたかったことは何ですか?
オガワサラ:やっぱり推し活の純粋な楽しさとしんどさの両方を描きたいと思いました。推しがいると人生が潤うし、推しがいなかったら違う人生になっていた方もいると思っています。ただ、しんどさを感じるのも事実。だからこそ、自分や周りのオタク友達たちが通ってきた辛さを、作品を通じて伝えたいなと思ったんです。
――今回は『推し』がテーマでしたが、これから描きたいテーマがあれば教えてください。
オガワサラ:女性の生きづらさについて描いてみたいですね。妊娠出産で、キャリアがなくなってしまうような経験を多く見てきたので。
それから推し活の話を描いたので、今度はアイドル側の話も描いてみたいなと。握手会で対応に困る人もいるでしょうし、パフォーマンス面での悩み、デビューできない苦しみ……などあるでしょうから。いろいろな切り口で描いてみたいです。
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昨今、推し活=すばらしいものとうたわれる一方、『推しが辞めた』では推しがいることの楽しさだけでなく、つらさや苦しさも描いているオガワさん。
推し活をする上での金銭的な問題やファン同士のSNSでの牽制など、アイドルファンならどこかで見たことがあるような景色に心を揺さぶられ、“自分の物語”として読み進めてしまう方も多いでしょう。
推し活をする全ての人の人生をそっと肯定するような本作。推し活に疲れてしまった人にこそ、手にとって欲しい一冊です。
【インタビュー前編】⇒
“推し”活資金「どっから出てんの?」オタ友にも言えない懐事情。作者を取材<漫画>
【インタビュー中編】⇒
きっかけはメンバーの脱退、話題のアイドルサスペンス『推しが辞めた』誕生秘話
【オガワサラ】
DAYS NEOへの投稿をきっかけに、2020年ヤングマガジン38号に読み切り『pm7:20』が掲載。その後、第83回ちばてつや賞ヤング部門にて、『わたしのかみさま』で優秀新人賞を受賞。2021年6月からコミックDAYSにて『推しが辞めた』を連載開始。
Twitter:
@saraogawa_
Instagram:
@saraogawa_
<漫画/オガワサラ 取材・文/すなくじら>
すなくじら
映画やアニメ、漫画、アイドルなどのエンタメジャンルを得意とするライター・インタビュアー。休日はもっぱら動画配信のサブスク漬けで、Netflixオリジナルが三度の飯より好き。