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俳優・宮沢氷魚は「超有名歌手」の長男。父親ゆずりの“琥珀色の瞳”に引き込まれる

役柄に命を吹き込むような美しさ

©クロマツテツロウ/集英社 ©WOWOW 郷原は、会議でさらに「選手の完成形を予見すること」とも言った。彼の絶対的な自信は、これまでのスカウト歴が裏打ちしているが、自由奔放で偉そうな態度に神木は疑念を抱く。するとスカウト部長の下部陸夫(でんでん)が、「どんな未来像が見えるのか」と郷原に聞いてみたらいいと投げかける台詞が強く響く。  第1話のラストは特に見もの。郷原は他のスカウトとは違い、グラウンドから遠く離れた屋上から選手たちの練習風景を見つめる。差し入れをもってきて、的外れな意見を述べる神木に郷原は、業を煮やしながらも双眼鏡を渡す。琥珀色の瞳でのぞく双眼鏡のレンズの先にどんな風景が広がるのか。  ドラフト会議直前になっても郷原は、誰もが剛腕を認める一番手選手ではなく、あくまで桂木を注視し続ける。第2話、夕日の屋上で神木がひとり双眼鏡を手にする場面が素晴らしい。レンズをのぞいて桂木を見て、「ほんと、野球が好きなんだな」とつぶやく横顔は、もはや的外れの表情ではない。宮沢氷魚の瞳が、役柄に命を吹き込むような美しさがある場面だ。

どの現場からも一位指名される俳優

映画『エゴイスト』©2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会 宮沢氷魚は、クォーターとして知られている。元「THE BOOM」のヴォーカルだった父・宮沢和史の写真を見ると、氷魚と同じ琥珀色の瞳をしている。父親譲りの瞳の色を特性として活かしながら、彼はほんとうにまったく無駄のない演技をする俳優だと思う。  変に感情的な芝居をすることも、変に視線をあっちへこっちへ動かすこともない。184センチの長身でどんと構えたたたずまいがあり、重心を置いてわずかに琥珀色の瞳から視線を動かす。それだけで演技が成立してしまう。  鈴木亮平との共演が話題の『エゴイスト』(2023年)で演じたゲイの青年役もまさに無駄のない名演だった。『ドラフトキング』の第2話、郷原の本気のスカウト精神に感動した神木が、感極まって抱きつく芝居がかった演技ですら、無駄がないと思わせてしまう。  そんな実力を秘めた宮沢氷魚は、今、どの現場からも一位指名される俳優だ。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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