俳優・宮沢氷魚は「超有名歌手」の長男。父親ゆずりの“琥珀色の瞳”に引き込まれる
『ドラフトキング』(WOWOWで配信中)は、プロ野球のスカウト物語だが、野球について知識がまったくない人でも楽しめる。なぜか。
敏腕スカウトのムロツヨシと新人スカウトの宮沢氷魚の掛け合いを見ているだけで、彼らがいくらでもヒットを打ってくれるからだ。
「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、“どの現場からも一位指名される俳優”だと感じる宮沢氷魚の無駄のない演技を解説する。
神木良輔(宮沢氷魚)は、プロ野球選手としてはうだつがあがらなかった。「横浜ベイゴールド」からドラフト指名され、入団するものの、1軍入りはできず、5年で戦力外通告される。球団スカウトの郷原眼力(ムロツヨシ)からは、プロでは通用しないとはじめから釘をさされていたのだが。
選手生命は絶たれたが、野球人生を諦めたわけではない。神木は、新人スカウトとして出直すのである。強豪「花崎徳丸高校」野球部の視察にきた神木が、甲子園常連高校に育て上げた佐々木監督(大鷹明良)の威風ある姿を見つめる瞬間、さえない印象しか与えていなかった神木がにわかに光りはじめる。
光源は、宮沢氷魚の瞳から。陽光が差すグラウンドに出ると、ガラス玉のように輝く。宮沢の琥珀色の瞳を見て、これからはじまろうとしている野球ドラマに、早くも幸先よいヒットを感じた。
「横浜ベイゴールド」スカウト会議でのひと幕。ドラフト一位指名選手を選出するため、エリア担当の神木が報告する。彼は、スカウト1年目にして自分が担当するエリアからドラフト一位指名が出ることを期待している。
ここで待ったをかけるのが、ひとりリモート参加する郷原だった。郷原は、「花崎徳丸高校」2番手投手、桂木康生(生田俊平)を推すが、他ならぬ神木が最低評価を付けた選手。郷原から「お前はどこまでガラクタなんだ」と言われるように、神木にはまだ見る目がない。スカウト主任から根拠を求められた郷原が、このひと言で押し切る。
「俺の目がそう言ってる」
水戸黄門の「この紋所が目に入らぬか!」級に破壊力のある決め台詞を会議室内に轟かせた瞬間、「でた、俺の目」と心の声でつぶやく神木が、目を見開く。こ気味悪い演技のムロツヨシによるドヤ顔と宮沢の琥珀色の瞳が混濁しながらも調和する。このドラマには、そうしたふたりの掛け合いの面白さがある。
琥珀色の瞳を見てヒットを感じる

掛け合いの面白さ

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