公認心理師「依存し合っている関係に気づいていない」
一見すると仲むつまじく共存しているように見える、母と娘。ですが何十年も“母親の言葉”に縛られ続けている由希子さんは、令和にいながら昭和の価値観で生きているようにも見えました。家族や結婚のあり方について、古い価値観からの解放が頻繁に叫ばれている今の時代だからこそ、親子のいびつさが浮かび上がる気がします。
公認心理師の荒谷さんは、この関係を「共依存親子」だと指摘します。
「私は“8050問題”に当てはまる親子の事例を数多く見てきました。今回は娘さんが働いていて経済的には自立している点でそれとは違いますが、この親子の場合はお互いに依存し合う関係で成立する
“親子の共依存”関係にあると思います」(コメントは荒谷さん、以下「」内同じ)

彼女たちの、主にどんなところに共依存の傾向があるでしょうか。
「たしかにお母さんは早くに夫を亡くし大変だったとは思いますが、幼い頃から娘に『婿をもらえ』と言うことは、そこに、
娘の結婚後も自分の面倒を見てもらいたいという想いが見えてきます。仮にこれが老舗(しにせ)の家柄だとか伝統的な家業で男手が必要だとかならまだしも、そういうわけでもない。親の一般的な感覚として、『子どもに迷惑をかけちゃいけない』と思うのであれば、『婿をもらえ』とは言わないでしょう。
ですが娘さんはそういった母親との関係に違和感を覚えることがなく、唯一の家族である母親との暮らしに満足している。
共依存親子は、自分たちが依存し合っていることに気がついていないことがポイントです。親子の共依存は、8050問題とはまた違う問題をはらんでいます」
由希子さんの場合、母親とどのように関わるのが良好な親子関係と言えるのでしょう。

「まず娘さん自身には、いつか待っていたら白馬に乗った王子様が現れて、全て良い状況に変えてくれると潜在的に思っている節(ふし)を感じます。どういうことかというと、
母親に対しても不倫関係にしても、いつも受け身で、自分の人生は自分で切り拓いていくといった自発的な原動力が感じられません。
これはやはり、幼い頃からの母親の積み重なる言動に発端があったとは思いますが、それだけではなく、娘さん自身の受身的な性格や、自信のなさからも来ていると思います」