コスメや女性装が妻に見つかり「普通の両親で子どもを育てたい」と離婚に。ryuchellさんへの中傷で考える“性別に悩む人”は親として不適当なのか
晶さん(仮名、38歳)が、出生時に割り振られた性は「男性」。女性と結婚し、一児に恵まれたが、自身が女性でもなく男性でもなく「Xジェンダー」であると気づきます。自身の生きやすいスタイルを求めはじめたところ、妻から離婚を求められました。
なぜふたりは別れることになったのか。
出生時に「女性」が割り振られたけど「自分を男性としか思えない」という、佐倉イオリさんによる晶さんへのインタビューをお届けします。(以下、佐倉さんの寄稿です)
私、佐倉イオリは、幼いころから「性別違和」を感じてきましたが、男性しか好きになれなかったことから自分の違和を認められず、それでいて女性として扱われることに葛藤がありました。
それがピークに達したのが、結婚生活でした。「妻」や「嫁」、つまり100%女性と見られてしまうのがつらい。夫のことは好きでも離婚したほうがいいのではないか、と思い詰めました。
そんな折、ryuchellさん(故人)の離婚報道を知りました。当時、ご本人のSNSにはこんな投稿がされていました。
<父親であることは心の底から誇りに思えるのに、自分で自分を縛りつけてしまっていたせいで、“夫”であることには、つらさを感じてしまうようになりました>
ryuchellさんはご自身のアイデンティティを明言されていなかったはずで、「“夫”であることのつらさ」の源は、わかりません。しかし、誰だって家族や人としての「あるべき姿」や「女性らしさ」「男性らしさ」に息苦しさを感じることはあるのではないでしょうか。
その苦しさがより深刻に、より顕在化しやすいのが、私のようなマイノリティ性を持つ人でしょう。
そこで私は、婚姻後にパートナーに性別違和をカミングアウトした人々の話を聞いて、その答えを見つけたいと考えました。第一弾として、Xジェンダーの晶さんにお話をうかがいました。
――はじめてお会いしたのは6、7年前で、まだお互い何の治療もしていないころでした。いまはホルモン治療によって、見た目が男性的になっていますが、当時の私はまだ明確に性別違和があると表明できずにいて、晶さんに対しても当事者なのかそうでないのか、あいまいにしていました。一方の晶さんは当時から変わっていないと思いますが、あらためてアイデンティティと、現状を教えていただけますか?
晶:僕は、出生時に割り振られた性別は男性で、Xジェンダーを名乗っています。宇多田ヒカルさんが2021年に告白して話題になった「ノンバイナリー」という、男女二元の性別に当てはまらないアイデンティティがあります。Xジェンダーもノンバイナリーと似ていますが、日本生まれのアイデンティティなこともあって、僕にはしっくりきています。
「らしさ」がもたらす生きづらさ
婚姻後のカミングアウト

