晶:またXジェンダーは、人によって「無性」「中性」「両性」「不定性」など、いろいろな意味で使われます。
僕は3年ほど前、男性的な体つきがイヤで、女性ホルモンによるホルモン治療と、SRS(性別適合手術)を受けました。服装もスカートなどの女性装をしています。
はたから見れば「トランスジェンダー女性」ですが、女性の部分と男性の部分、両方を感じたり、男女どちらでもないと感じたり、女性とはいえません。やっぱり、ジェンダーのアイデンティティは「女性」でも「男性」でもなく「X」ですね。
――性自認、アイデンティティは白黒はっきりつけられないものではありますが、私は自分を男性だと思うので、男女どちらでもない感覚は理解がむずかしいです。きっと、性自認に悩んだことがない人には一層わかりにくいですよね。
晶:そうですね、僕も理解してもらえそうな人にしかXジェンダーとは言いません。仕事上の付き合いなど、説明が必要なときは「トランスジェンダー」と名乗ります。

――以前、結婚していた際、元パートナーには「性自認」について、どう話されていたのでしょう? 離婚に至った理由に関係しているのでしょうか? たしか、お子さんもいらしたと思いますが。
晶:元妻との婚姻関係は、15年以上前に解消しています。ホルモン治療をはじめるより前なので、直接的ではないにしても、少なくとも、性別の問題が離婚のひとつの要因ではあったとは思います。
僕のなかには男性の部分もあって、元妻のことも男性として愛して、幸せにしたいという思いがありました。でも同時に、男性として生きていくことには抵抗感があった。
当時は男性として、メーカーの営業職をしていました。そして家に帰るとパパ、夫でした。当時はまだXジェンダーという言葉も知りませんでしたから、トランスジェンダー女性たちのコミュニティに顔を出すようになっていました。