そしてふみこからランチに誘われ、また家に行って一緒にパングラタンとスープを作る。深愛は、自分が店長と一緒になることを理想としつつ、店長の妻であるふみこにいっさい、嫉妬はしていない。ふみこに頼られることを純粋に喜んでいる。
毒母とふたりで暮らす深愛の心を、ふみこが埋めてくれているのだろう。

深愛はおそろいのエプロンを持参し、ふみこに料理を教わりながらふたりで作る。お互いに心の穴を埋めあっていく様子はとてもほのぼのとしているが、深愛の「理想」はあくまでも店長と一緒になることなのだ。
パングラタンをおいしいと食べる深愛に、「うちでは定番だったのよ」と言うふみこ。定番ということは、自分が愛する那須川も食べていたということなのだが、深愛に嫉妬の気配はない。
那須川もまた妙なバランスの上に生きている男だ。妻を案じながらも、深愛を想い、深愛と一緒に働けなくなったことを嘆いている。「深愛ちゃん、きみが好きだ。きみは僕の救いだ」と心の中でつぶやきながら、深愛のいなくなったスーパーを虚ろな目で歩いている。

そんなとき、ふたりはまた車でデートをしている。深愛は店長を心配させまいと、「支援団体に依頼があって、最近、店長の奥さんのカウンセリングをしている」と白状する。
半分嘘で半分本当だが、那須川は深愛のおかげで妻がよくなったことを実感して彼女を抱き寄せる。いや、そこは抱き寄せている場合じゃないだろうと思うのだが、那須川もまた、とんでもなく「悪いやつ」ではないように見えるのが不思議である。