「レディース服ポケットない問題」を解決したい。“ペットボトル600ml入るポケット付きスカート”に開発者が込めた思い
これまで、マジカルポケットが付いたアイテムを累計20万着、売り上げてきた。多くの人が「ニットワンピースやレーススカートにポケットなんてあるはずがない」と思っている。だったら、なんとしてでも付けてみせよう。元鈴木さんは、持ち前の“根性”を発揮してきた。
CINEMATIQの販売サイトを見ると、ひと目で気づくことがある。着用しているのが、細身のモデルばかりではない。グラマーな女性が中心で、掲載写真には身長とバストのカップ数が明記されている。
「日本の洋服は、平均的なバストサイズに合わせて作られたものがほとんどで、グラマーな女性が着ると胸まわりが窮屈(きゅうくつ)で動きにくいし、暮らしづらい。私がオリジナルブランドを起ち上げるときに決めていたのは、女性の体型の多様性に対応したものづくりです。
伸びる生地と許容感のある作り、胸から二の腕にかけてピチピチにならない余裕を持たせ、腰まわりのお肉を目立たせず下着のラインも浮かせないよう、たっぷりのシャーリングを入れています」
暮らしのなかに不便があるだけではない、と元鈴木さんは指摘する。服を買いたいと思ったときに、「自分のために用意されたものがない」と気づくのはとてもネガティブで、社会から拒絶されているように感じる体験だ。
「服から『お前は客じゃない!』といわれているようですよね。女性には、服から認められる、承認される体験を重ねてほしいんです」
ファッションは移りゆくもので時々の世相が反映されるが、それを着る女性たちの意識も如実に表れる。
「世界的に見て、日本ほど女性が生々しい肉感を避けようとする国はないと思います。肉感は日本で生きる女性にとってマイナス要素なんですよね。
海外に行くと、ボディラインが出るワンピースや胸元を強調したトップスを着ている女性を、世代を問わず目にします。
日本に生きる女性の多くに、性的に見られたくない、という意識があるのでしょう。これは、無遠慮な視線や、痴漢やセクハラに遭った女性が『そんな服を着てたから』と非難されるのと、決して無関係ではないです」
元鈴木さんは、コルセットのデザイン、販売も手掛けている。腰回りを締めてキュッとくびれを作ると、姿勢がよくなると同時に、いわゆる“女性らしい”シルエットになる。
「私のもの作りのベースには、常にフェミニズムがあるんです。コルセットの歴史は長いですが、女性の体を締め付けるところから、フェミニズムの文脈では精神面の抑圧や束縛もコルセットにたとえられますよね。
だったら私は、心と身体を締めつけるのではなく抱きしめるような着け心地のコルセットを作ろう、と決めました」
誰もが服から拒否されないように
肉感を避ける日本の女性
