
※イメージです(以下、同じ)
――本書では、ADHD特有の「うっかりミス」をして笑われたり怒られてしまった経験が描かれていました。はなゆいさんにとって特につらかったのはどんなことでしたか?
はなゆい:仕事上すごく大事な集まりが遠方であったとき、私が過去に仕事で遅刻をしたことを知る上司に「絶対遅刻するな」と散々言われたんです。私も「絶対に遅刻しないぞ」と気合いを入れて、2時間で着くところを4時間前に家を出ました。
「これだけ余裕があれば絶対大丈夫」と油断してしまったのが失敗でした。途中の駅でお茶をしたのですが、そこから逆方面の快速特急に乗ってしまい……。しばらく気づかず、とんでもなく遠い場所まで行ってしまいました。
気づいてから急いで目的地に向かったのですが結局遅刻。4時間前に出た、電車を間違ったと伝えたのですが、信じてもらえず、「そんなにやる気がないならもう二度と来なくていい」と言われました。自分でも自分が嫌になって、もうどうにでもなれと「電車に飛び込もうか」と思ったことさえありました。
――4話では医師がはなゆいさんの特性を車にたとえ、苦手なことや比較的得意なことを説明する場面がありました。そこで医師は「このぽんこつ車を乗りこなすしかないんですか!?」と嘆くはなゆいさんにさまざまな対策を伝授してくれていました。現在は失敗することを想定して「ぽんこつを予め計画に組み込んでおく」対策をされているそうですが、具体的にはどんなことをしているのでしょうか。
はなゆい:スケジュールに空き日を作っています。空けておいても、絶対に何かで埋まるので余裕を持った予定を組むようにしています。
あとは、自分としては悲しいのですが、「お金で解決できることだったり人に迷惑をかけていない失敗は自分を責めない」と決めています。
例えば、駐車料金で他人の分を払ったとか、返品不可なのに間違ったサイズのものを注文したとか。予約の時間を間違えるなど、人様に迷惑をかけてしまったときは全力で謝って、できるならお菓子などのお詫び品を贈ったりしています。できるだけ自分を責めずに、次回に生かすために失敗したときの状況などをメモしておくようにしています。
――人付き合いについて、現在はどんな風にママ友や周囲の人と関わることを意識していますか?
はなゆい:すごく仲良い場合は例外ですが、基本的にはADHDのことは人には伝えていません。ただ、「スケジュール管理とか人の顔覚えるの苦手なんだよね〜」くらいは言うことはあります。
ただ、そう言われても相手が困るだろうなと思うので、普段は苦手なこと以外で全力で人の役に立てるよう意識してます。そこで信頼関係において「貯金」を作っておくことで、何かやらかしたときに大目に見てもらえるようにしています。
私が失敗をやらかすことはゼロにはならないと思っているので、そのときに備えて、悪口や陰口、噂話なども絶対言わない、乗らないように心がけています。
――いろいろな対策をしていると精神的に疲れてしまうことはないですか?
はなゆい:すごく頑張ってるときは、ミスを減らすことができるのが楽しくて、「私もできる人間になれるんだ」と頑張ってた時期もありました。でも、その後どっと疲れてしまい「もう誰にも会いたくない」みたいな状態になったこともあります。
それを教訓にして、今は「おっちょこちょいだけど憎めない人」を目指して、「ミスもするけど、人助けも頑張るよ!」みたいなスタンスで、普段から適度に力を抜いています。周りの人にも、そんな認識を持ってもらえるようになってからラクになりました。あと、家族や昔からの友人といるときなど、何も気にしなくていい日や場所を持つこともすごく息抜きになっています。