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R-1元ファイナリスト「この優勝は現在のエンタメ界にとって大きな意味」王者“ウソ”漫談家の悲しい秘話も

「ひとり芸日本一」を決める『R-1グランプリ2024』(フジテレビ系)が3月9日に開催されました。 10年目以下の芸歴制限を撤廃した今大会は、史上最多の5457人がエントリー。激戦を制したのは、芸歴20年目のピン芸人、街裏ぴんくさんでした。
(画像:R-1グランプリ2024公式サイトより)

(画像:R-1グランプリ2024公式サイトより)

街裏さんは、まったくの架空の話を熱を込めて激しく語り続ける、独自の世界観が魅力の漫談家です。決勝進出者の中でダントツのベテランが、マイク1本、身一つでつかみ取った栄光。「街裏さんの優勝は、現在のエンタメ界にとって大きな意味をもたらす」と、構成作家の大輪貴史(おおわ たかふみ)さんは言います。 大輪さんはかつてピン芸人「大輪教授」として活動し、2007年にはR-1ファイナリストに選出。現在はお笑い養成所の講師や、複数のお笑い事務所による若手芸人のネタ見せもつとめています。人を笑顔にする「ウソ」が魅力の街裏ぴんくさんの存在や、かつてのTVオーディションでのエピソードを明かしてもらいました。

「街裏ぴんくはもっと認められなきゃいけない」応援したくなる熱量

――優勝を飾った街裏ぴんくさん。今回の勝因はどこにあったと思いますか? <街裏さんは昔から面白いと言われながら、なかなかチャンスが巡ってこない人だった。芸人サイドや昔から彼を知っている人は絶対に応援したくなったはずです。お笑いの賞レースって、やっぱり勢いや流れに左右されるものはあるんですよ。「この機会に街裏ぴんくはもっと認められなきゃいけない」と願っていた人たちは、とても多かったように思います>(大輪さん 以下山カッコ内同じ) ――ネタについては、今回の決勝進出者でいうと唯一の漫談でしたね。 <寺田寛明さんも漫談と言っていいとは思うのですが、マイク一本というのは街裏さんだけでしたね。ハイクオリティな演出ができるようになってきたこの時代に、しゃべりだけで優勝したのは凄すぎますよ。 手ぶらで汗かいて息切らして、あれだけの熱量でしゃべり続けるって、実は一番カッコ良いじゃないですか。呼吸をするのも大変になるほどの勢いって凄まじいですよね。普段、若手芸人のネタ見せもしていますが、笑いを取るのはこのくらい大変なんだぞ、って若い子たちに伝えたいです(笑)>
――今回の優勝は、地下芸人界の実力者がようやく陽の目を浴びた感は強いですよね。 <「これでようやく街裏ぴんくにオファーができる」と思った業界人はけっこういると思いますよ。知名度が低いことを理由にキャスティング会議のテーブルに出せないというジレンマを抱えていた人は多いのではないでしょうか。 今のテレビ界に「まだ知られていないけど、この面白い芸人を俺が売るんだ!」と言ってくれる人が増えて欲しいですね。「R-1優勝したから出てください」じゃないんですよ! これ、私は声を大にして言いたいです(笑)>

ウソを見抜けない大説明時代に風穴を開ける存在

――テレビマンに一石を投じるメッセージ(笑)大輪さんも街裏さんのことは昔からご存じだったのですか? <3~4年くらい前にとある番組のネタ見せのオーディションに来てくれたことがあります。 街裏さんのことはもともと知っていて、面白いという印象もあって期待していたのですが、彼は「ウソ」と大きくプリントをされたTシャツを着ていたんです。 まだきっと、色々と模索をしていた頃なんだと思いますが、そんなTシャツを着ないと伝わらないと思わせた「世間」に、私はガッカリしたんです。この人の漫談がウソってことくらい、説明しなくたって皆さんわかるでしょ?!って、すごく悲しくなったことを覚えています>
――昨今のテレビのテロップや補足説明文化の問題に通じるものがある気がします。 <街裏さんの優勝で本当に良かったと思うことは、ウソをウソだと見抜けない人に対するアンチテーゼになるという点ですね。今回の一本目のネタ中、石川川石のところで客席から「へー!」って声が聞こえました。彼のネタはテロップや説明に慣れ過ぎている人には難しいのかもしれません。 でも、説明しない楽しさって絶対にあるじゃないですか。だから私としては、街裏さんは今の大説明時代に風穴を開ける存在になると思うんですよ。街裏さんの笑いを理解すれば、きっとウソをウソを見抜ける人間になれる。この優勝は、世の中のためになる優勝です!>
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今年のR-1は〇〇の存在に尽きる!
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