
翌日、ハルトくんが帰宅するとすぐに家のチャイムが鳴りました。Aくんが遊びに来たのかと思って出てみると、AくんとAくんのお母さんが立っていたそうです。
「Aくんのお母さんとは入学式や保護者会などで顔を合わせているかとは思いますが、私は1人息子の初めての小学校でわけもわからなかったので、顔を覚えていなくて……。実質、初めてお会いしたようなものでした。
印象としては、木村多江さんのように落ち着いた感じの女性。しっとりとした笑顔で、大人の雰囲気でした」
無難に「いつもお世話になっております」と挨拶をしたものの、なぜ来たのだろうと不思議に感じていたマキさん。
Aくんのお母さんも「いつも息子や娘がお邪魔してしまって、すみません」と返したあと、マキさんの目の前に1万円札をスッと差し出し「今まで息子や娘がいただいた分のお菓子やジュースの分です」と言いました。
マキさんはすぐに「いりません」と返しましたが、「これで、これからもこの子が遊びに来たときにお菓子を買う足しにしてください」と言うAくんのお母さん。マキさんが戸惑っているなか、1万円を強引に手渡してAくんとお母さんは帰っていったそうです。
「Aくんがお母さんにどのように伝えたのかはわかりません。純粋に『今まで迷惑をかけたから、その分のお金を支払おう』という気持ちで1万円を用意してくれたのかもしれません。
でも、もしかしたら『ハルトの家は毎日お菓子を買うお金がない』や『ハルトのママがお菓子を買うお金をほしがっている』と伝えたかもしれないので、どんな意図の1万円なのかわからないんです。
どっちにしても、お金で解決したかったわけではないのに……とモヤモヤしました」
その後、夏休みに入ってすぐにAくん一家はお父さんの転勤で遠くへ引っ越すことになり、転校していったのだとか。
そのため、マキさんはそのときにもらった1万円は手を付けずに取っておいているそうです。
【他のエピソードを読む】⇒
「実録!私の人生、泣き笑い」の一覧へ
【あなたの体験談を募集しています!】⇒
心がほっこりした「ちょっといい話」、ありえない!「びっくりした話」「ムカついた話」、人生最悪の恋愛を募集中!(採用時に謝礼あり)ご応募はここをクリック
<取材・文/nami イラスト/ズズズ
@zzz_illust>