すると何も知らない和也さんが満面の笑顔で、手を振りながら待ち合わせ場所にやってきました。
「そしていつも通り手を繋ごうとしてきた和也の手を振り払い『おい、てめぇ結婚しているらしいな!何が彼女募集中だよ?ふざけやがって』と思いきり凄んでやりました。実は私……学生の頃ちょっとだけやんちゃだったんですよね(笑)」
すると明らかに視線が泳いで焦った様子の和也さんは、茉奈さんに背中を向けると走って逃げようとしたそう。
「ですが私が『お前◯◯に住んでんだってな!家も調べはついているし、妊娠中の奥さんに全部ブチまけてやろうか』と叫ぶと和也はピタッと足を止め、ものすごい苦々しい顔で私の方にゆっくり戻ってきたんです」

そして茉奈さんが「いいように私のことを騙しやがって!謝れよ!!」と肩をどつくと、和也さんは歩道で土下座をして「お願いします!妻にバラすのだけはやめて下さい」と許しを乞うてきました。
「私の豹変ぶりにかなりビビっているようで『本当にすみませんでした!』と何度も頭を下げていました。そんなみっともない和也の姿を見ていたら、何だかバカらしくなってきたし、周りに人が集まってきてヒソヒソ話を始められて面倒になってしまい『このクソが!』と吐き捨ててそのまま立ち去ったんですよ」
しばらくして振り返ってみると、もうそこには和也さんの姿はなかったそう。
「もちろん和也の家を知っているなんて嘘だし、妊娠中の奥さんに迷惑をかける気なんて最初からなかったのですが……こうでもしないとどうしても私の気が収まらなかったんですよね」
ただ泣き寝入りして、騙された屈辱を噛み締めながら忘れられる日まで待つなんて、茉奈さんはとても耐えられないと思いました。
「私はスッキリできましたが、こんな仕返しをしたことがバレたら『そんな危険なまねはするな』と小春に怒られるに決まっているので黙っておきたいと思います」と微笑む茉奈さんなのでした。
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<文・イラスト/鈴木詩子>