家事は苦手だけど、洗濯は好き。まきこさんと同じ思いの人って、けっこう多いのではないでしょうか。私もそのひとりですが、理由は、「汚れたものが目に見えてきれいになるから」。しかも大半を洗濯機がやってくれるのも大きいです。
憂鬱なのが部屋干しですが、「加湿器替わり」と思考転換すればたちまち節約モード。しかも肌の保湿も担ってくれるかも、というプラス思考で幸福度も高まります。
料理中の蒸気も、保湿としてとらえるまきこさん。味噌汁や炊飯器の湯気、アロマオイルよりも自然で心に染み入る匂いが、心まで潤してくれそうです。とはいえ、「湯気をあびるのは熟練の技が必要です。火傷をする可能性があるので真似しないでください」と注釈付きですので、あくまで気分だけを楽しんでください。
いい出会い、いい仕事。空から何かいいことが降ってこないだろうか。そんな風に、私達はつい、ないものねだりをしてしまいます。足元を見れば、小さな幸福がいくつもあるというのに、まったく気づいていないのです。
私達がまきこさんに共感するのは、まきこさんが家のあちこちに転がっている小さな幸福を、決して見逃さないから。家事や仕事、夫、子供、毎日接するいつものことが、本当はとてつもなく尊いことなのだと、まきこさんは知っているのです。
頑張らなくてもいいし、急がなくてもいい、誰かと比べなくてもいい。あなたがあなた自身や、家族をそっと労わればいい。本書を読むと、自分と家族をぎゅっと抱きしめたくなりますよ。
<文/森美樹>
森美樹
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『
主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『
母親病』(新潮社)、『
神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。
X:@morimikixxx