
さらにどのお肉も本当に美味しく、焼き加減も完璧で、雪乃さんはすすめられるがままにビールをおかわりしてほんのり酔っ払いすっかり上機嫌になりました。
「そしたら誠也さんが『ごめん、仕事の電話がかかってきちゃったからちょっと待っててね』と席を立ったので、『こんな時間にまだ仕事なんてよっぽど忙しいんだな』と感心しつつ、私はビールを飲みスマホでゲームをしながら待っていたんですよ」
ですが待てど暮らせど誠也さんは戻って来ず……時計を見るとすでに席を立ってから20分。さすがにおかしいと思った雪乃さんが、キョロキョロしながら誠也さんを探し回っていると、店員さんに「お連れさまならもう帰られましたよ」と言われてしまったそう。
「嘘でしょ? と動揺しながら震える指でLINE電話をかけてみると、呼び出し音はするもののしばらくすると切れてしまうので、ブロックされた! と思いました。他のSNSもブロックされていて、アプリを開いてももう誠也さんとのやり取りは消えていたので『あ、これは“食い逃げ”されたんだ』とやっと気がついたんです」
しばらく呆然としてしまった雪乃さんでしたが、我に返ってお財布の中身を見てみると1万2千円しか現金はありません。「ここはカードで払うしかないな……」と悔しさと悲しさが入り混じった苦い気持ちになりました。
「ですがテーブルを見るとまだお肉やサラダが残っていたので……もうどうせ私がお会計するんだし、気持ちを切り替えてこの高級なお肉を残さず味わって帰ろうと決めて、ライスとビールを追加注文してやったんですよ」
そして帰りにお会計してみたら金額は2万円を超えていて……誠也さんの調子に乗った注文の仕方に心底腹が立ったそう。
「最初っから食い逃げするつもりで私をデートに誘ったのか、実際に会ってみたら私のことが気に入らなくて『こんな女もうどうでもいいから食い逃げしてやろう』と予定を変えたのか分かりませんが……とんだ最低男に当たってしまいました。あんなヤツのせいでしばらく節約生活しなくちゃならないなんてムカついて仕方がないし、絶対にどでかいバチが当たると信じています」と拳を握る雪乃さんなのでした。
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<文・イラスト/鈴木詩子>