私は今年40歳になりますが、この「40」、最強の「不惑」感、大人感を孕(はら)んでいませんか。見た目が35歳くらいにひと様からは見えていたとしても、実年齢を伝えた途端、その数字イメージが一人歩きをはじめる感覚があります。「意外と年齢いっているんだね!」みたいな。
この「年齢、数字にこだわる文化」と言うのは日本、特にもしかしたら東アジア文化圏に多いのではないかとも感じます。例えば、アメリカのテレビ報道を参照してみた際、ある歌手がトランプ大統領の就任式で歌を披露するというニュースの際、わざわざかっこ付けで彼女の年齢を伝えることはしないでしょう。これが日本でしたら、読み上げないにしても、名前の横に(〇〇歳)の表記が文字スーパーでつけられることが時折ある気がします。
見た目がフレッシュで、自分自身意欲満々に日々を送っているはずなのに、(〇〇歳)という数字の呪縛が後ろから急に襲いかかってくるのです。それがプラスの作用を及ぼすなら良いのですが、むしろ逆にさまざまな思い込みを他者に与えかねないというのが現実問題存在する訳で。
〇〇歳はこんな服着ないよね、とか、〇〇歳だから子どもいるはずとか、〇〇歳で一人暮らしなんて、毎日寂しいに違いない、とか!! あとは、すごく若作りに必死だね、なんていうよくわからない悪口につながったり。
時折、年齢非公表という方がいらっしゃいますが、最近になってその理由がよく理解できるようになってきました。
それは若く見られたい、といった単純な理由ではなく、数字が先行して余計なバイアスを他人に与えることで、自分の仕事やプライベートでのさまざまな可能性を潰したくないから、ということではないかと想像します。

先日、同世代の友人に、私自身早めに年齢非公表にしたいと思うときあるなあ……とぼやいたところ、わかるわかる! と大いにその場が盛り上がりました。
でも! 非公表にしたらしたで、誰かが卒業アルバムをどこからか引っ張り出してきて、「実は〇〇歳なんだよ、この人!」って言ってネット上が盛り上がるに違いないと言われてしまい、そうなのかなあとシュンとなってしまいました。
この数字マジック、どうにかなりませんかね? まずは名前の後ろのかっこ付きの年齢表記、ちょっとしばらくやめてみませんか?
なーんて言ってはみるものの、この連載の見出しにもよく「39歳元アナウンサー」なんて書かれているわけで、それが確かにキャッチーになっている部分があるのも確かなんでしょうね……。ああ、数字問題、ややこしい。
<文/アンヌ遙香>
アンヌ遙香
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道生まれ。お茶の水女子大学大学院修了。2010年、TBSに入社。情報番組『朝ズバッ!』、『報道特集』、『たまむすび』などを担当。2016年退社後、現在は故郷札幌を拠点に、MC、コメンテーター、モデルとして活動中。文筆業にも力を入れている。ポッドキャスト『
アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。Instagram:
@aromatherapyanne