「子どもを授かりたいという意識が強くなった」35歳女優が感じた“節目”での変化
俳優の瀧内公美さん(35歳)が、奥山和由監督の最新作『奇麗な、悪』で主演を務めました。芥川賞作家・中村文則による原作の作品で、瀧内さんは自身の壮絶な半生を語る女性をワンカットで見事に演じ上げています。
瀧内さんは昨年、大河ドラマ『光る君へ』の源明子役が話題となり、最近でも金曜ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』の女性検事役を好演。次期NHK連続テレビ小説「あんぱん」にも出演するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍を見せています。まさに時の人、瀧内さんにお話を聞きました。
――今回の『奇麗な、悪』は、主人公のひとり語りで展開していくなど実験的な色合いも濃い作品でした。オファーを受けてどう感じられましたか?
瀧内公美(以下、瀧内):お話をいただいて脚本を拝見したのですが、「え、どういう映画になるの!?」とかなり衝撃を受けましたね。奥山和由さんと言えば、わたしの中では北野武監督の初期三部作を手がけた方というイメージでしたので、出演するかどうかは別として、ちょっとお会いしてみたいなとも思ったんです。
――脚本の印象についてはどうでしたか?
瀧内:この女性の独白は、本当のことなのかウソなのか、どちらなのか分からない、という印象でした。人としての面白さみたいなところが、起こった出来事への彼女なりの解釈で感じました。これだけ語っているのに、何故か余白を感じる。こちら側に自由な解釈を委ねさせているような。そして、彼女がこれだけ語り続けなければならなかったことに、一個人として面白さを感じた部分もありました。奥山監督が多少アレンジしたかった部分以外は、原作そのままに近い感じになっていたと思います。
――自由な解釈が許されるだけに、何に気をつけて演じようと思いましたか?
瀧内:できるだけフラットに言葉を届けることです。あれだけ自分のことをこと細かに話し続けて。本当にあった出来事なら、悲惨すぎてあんなに細かく話せないと思いました。そこは気になりましたね。本当は思い出したくないことだし、「今日は全部話しますね」という素直さも含め、わたしの中では承認欲求の強い人なんだろうなと思いました。だからこそ、演じる上では言葉に色をつけすぎないようにしようと思いました。
――そういう見方をすると、シチュエーションは極端なのですが、彼女に共感できる部分もありますね。
瀧内:そうですね。わたしが仕事をする上で「この役、瀧内さんにどうしてもお願いしたい」と言っていただいて「お願いしてよかったです!」と言っていただければうれしいですし、多少その感覚と似ているのかな、と。彼女は自分の人生を一生懸命まっとうしたいんだろうな、とも思いました。
たとえ彼女の独白がウソだったとしても、それをあれだけ話し続けることは、誰かを振り向かせる意思がないと到底、話せないことだろうなと思うんです。「わたしはここにいる」という。だから、ラストのあるセリフにすべての意味があるというか、誰に問いかけているのだろうかと。解釈はみなさんに委ねたいですけれども。
脚本を読んで衝撃を受けた
演じる上で「言葉に色をつけすぎないように」
