観てみると「えっ嫌いじゃない! むしろいい!」と思いました。冴えないオタク女子が変身して「女神」と崇められる役どころは、モデルであるKōki,が演じることによって高飛車で嫌味に見えてしまう可能性もある。しかし彼女は、ヒロインがもつ内面を表現することによって、高い好感度のヒロインを創り上げていました。
ホラーが大好きでメイクも興味をもてばとことんのめり込む“オタク気質”な部分と、いじめられた過去をもつからこその“自信のなさ”。これらを自然な演技のなかで見せることで、見た目ではない魅力に惹きつけられます。本作鑑賞後に映画『牛首村』もチェックしましたが、高い演技力に驚かされました。
また父譲りのヒロイン気質であるとも感じます。これは彼女の性格的なことではなく“存在感”のお話。演技自体はとても自然なのに、どうしても中央に置きたくなる魅力が彼女にもあるのでしょう。鑑賞中、木村拓哉の演技を観ているような錯覚に何度も陥りました。顔が似ているということもありますが、大げさな演技をしている訳ではないのに、目で追わずにはいられない。そんな天性のヒロイン力をKōki,はもっていると思います。
とはいえ下積み期間がなく親の七光りで、いきなりヒロインになった彼女自身の好感度は高いとはいえません。どちらも、日本人にはあまり好まれない要素だからでしょう。俳優の渡辺謙を父にもつ杏は、それを明かさずにモデルとしてパリコレで活躍し、七光りを好感度に変えました。そんなエピソードがKōki,にはないのです。彼女の場合、あまりにも木村拓哉に似ているので隠せなかったかもしれませんが。
父・木村拓哉にもSMAPで売れずに苦労した期間があり、ドラマ『あすなろ白書』や『若者のすべて』の助演で人気を築いた過去があったように、Kōki,にも主演ではなく、ヒロインの親友役や敵役などの経験が必要なのではないでしょうか。
クランクアップや舞台挨拶の映像で涙を流す、まだあどけないKōki,の姿を見るに、彼女には彼女の苦悩があると察します。だからこそ演技の才能があるにしても、下積みに相当する期間が必要なように感じました。
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親の七光りから逃げることはできないでしょうが、彼女自身が映画と同じように“なりたい自分”に向かって、切磋琢磨する姿を見守りたいと思います。
<文/鈴木まこと>