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再放送中の「フジ大ヒット名作ドラマ」を今の季節だからこそ見たいワケ。あまりにも有名なBGMにも注目

場面描写のリアルな細やかさ

北の国から

フジテレビジョン リリースより

 車窓を流れる空知川をカメラがなめるように捉える画面から徐々に主題歌の前奏が聞こえ、タイトルバック。倉本聰のクレジットに始まり、北海道の広大な大地、風にそよぐ森、厚い雲間から差し込む夕日など、五郎にとっての原風景が写る(間奏のトランペットは、「モルダウ」の名旋律後に聞こえる金管楽器と共鳴している)。  北海道はでっかい道。やっぱり大自然はいいよなぁ。と、冒頭場面を見ているだけならのんきに思ってしまう。でもいざ帰郷した土地は富良野の中でも辺境の過疎地。住居にする小屋にはテレビも冷蔵庫もない。純(吉岡秀隆)や蛍(中嶋朋子)のようなシティキッズにはとても大変。  ということはもちろん、電気もない。水道も整備されてない。東京が恋しい純はひたすら悪態をつく(でもそれが可愛い)。飲み水や歯磨きのためには野にわけいり、川の水をくむ必要がある。こうした場面描写のリアルな細やかさは、実際に富良野に移り住んだ倉本聰の実体験が反映されている(倉本が住むまで電気が通っていなかったという)。

超有名場面は放送されないが、秋の準備期間を楽しむ魅力

 しかもあんな小屋では冬の厳しい寒さはとてもじゃないがしのげない。あぁ、こりゃ移住失敗かと視聴者も頭を抱えるのだけれど、本作序盤の季節は秋。紅葉は美しいし、空気もとびきり澄んでいる。  北海道の秋がいかに美しいのか、目には見えないはずの空気感まで本作はちゃんと描いている。こういう有機的なテレビドラマ作品はめったにない。これこそ倉本聰の精髄だ。本作再放送に寄せてフジテレビ編成管理部の水戸祐介は「この夏の昼下がりにぜひご覧ください」とコメントしている。  東京は残暑が長引く。関東ローカルでの再放送だから作品世界の季節に合わせて、視聴者がリアルタイムで秋の準備期間を楽しむ魅力もある。  蛇足だが、本作屈指の超有名場面(五郎が「子どもがまだ食ってる途中でしょうが」と声を荒げるラーメン屋場面)は、ドラマスペシャル『北の国から‘84夏』で描かれる。今回の再放送では放送されないが、2023年から放送時間が拡大したこの「ハッピーアワー」枠で是非とも再放送してもらいたい。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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