「おじさんは『な、なんだよ……関係ないだろ』と必死に言い返していましたが、おばさんは『関係あるに決まってるでしょ? みんな並んでるんだから!』と詰め寄り、その言いっぷりが気持ちよくてついうっとりしながら見入ってしまいました」
これまで周囲を押さえつけていたはずのおじさんの勢いは徐々に失われ、代わりに周囲の視線が一斉におじさんへと向けられていきました。

※画像はイメージです
「そして『
店員さんはあなたのお母さんじゃないの。わがまま聞く義理ないでしょ? はい、分かったらさっさと商品受け取って!』とおじさんのエコバッグを突いたんですよね」
その逃げ場のない正論とはっきりとした指摘に、場の流れは完全に変わっていました。
「おじさんは何か言い返そうとして口を開きかけましたが、周りの視線に気づき我に返ったのか、急に態度も声も小さくなっていったんですよ」
そして「じゃあそれでいいよ」とごまかすように言うと、観念したようにコロッケを受け取り、逃げるようにそそくさと店を後にしたそう。
「その瞬間、店内に小さな拍手が起きて……店員の子は真っ赤になりながら、何度も頭を下げていました。私は何だかヒーローものの良い映画を観たような気分になり、とてもスッキリしたんですよね」
張り詰めていた空気が一気にほどけ、店内には本来の穏やかな時間が戻っていきます。
「おばさんは会釈で周りに応えながら、メンチカツを10個買っていきました。その数が聞こえてつい、『もしかしたらこの女性は大家族のお母さんで、揉め事を解決することに慣れているのかも?』なんて勝手な妄想をしてしまいました(笑)。私も次に理不尽な目にあっている人を見たら、彼女のことを思い出して、助ける勇気を持ちたいですね」と微笑む沙織さんなのでした。
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<文・イラスト/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
@skippop