
左からビルさん、カイくん、悠子さん。高校の卒業式にて
――ビルさんは、カイくんの大学受験をどう見ていたのでしょうか。
悠子:実際にカイが大学受験をするまでは、具体的なイメージはつかめていなかったみたいです。アメリカの大学受験は日頃の成績や課外活動の実績が重視されるため、日本のような受験勉強をする必要がなく、ビルもそれと同じようなものだと思っていたようです。
だから、日本に来てカイの勉強量を見て初めて「ただごとじゃない」と思ったみたい。本番の試験でも、顔面蒼白で帰ってきた姿を見て、「これを乗り越えている日本の学生はすごいな」と言っていました。心配していたぶん、合格を知ったときはすごく喜んでいましたね。
――日本とアメリカの両方の学校に通わせたことで、違いを感じることはありましたか?
悠子:息子のお友達を見ていると、日本の子ども達は本当に優秀だと感じます。要領がよく、頭の回転が速い。何より、問題解決能力が高くて宝石みたいな才能を持った子達がいっぱいいると感じます。
先日、カイが大阪に卒業旅行に行ったのですが、スーツケースを預けたら取り出せなくなってしまったそうです。カイが予約をした有料のロッカーだったので、本人は責任を感じて「どうしよう」と私に電話をかけてきました。
でも周りの同級生達は、「別の方法で支払いしてみたら?」「運営会社に電話してみるよ」と落ち着いて話し合っていたので驚きました。アメリカだったら、まず間違いなく悲鳴をあげたり、責任を押し付けあったりしてパニックを起こしていたはずです(笑)。
ただ、こんなに素晴らしい資質のある子が多いのに、筆記試験で進路が決まってしまうのはもったいないとも感じます。問題解決能力やクリエイティビティと、試験で正解を出すことは全然違うと思うんです。それよりも、好きなことは何か、どれだけの意欲を持っているのかを重視して、興味があることを学べる場所に進めるようになればいいなと思っています。

カイくん3歳、コビくん1歳のとき
――日本の高校生活を通して、カイくんはどんなところが成長したと思いますか?
悠子:カイは時間管理が苦手で、身の回りのことは人に頼ることが多かったのですが、高校生活を通してすごく成長しました。とくに、テニス部での活動が彼を育ててくれたといっても、過言ではないと思います。
朝練のために5時に起きて、自分で朝食を用意して出発する。試合のスケジュールや、持ち物の管理もできるようになりました。日本の厳しい部活動を経験できたことは、すごく有益でした。
――4月からは、カイが東京で一人暮らしを始めたそうですが、いかがですか。
悠子:家にカイがいないことが、すごく悲しいです。進路を決めた時から覚悟していたつもりでしたが、家を出る日が近づくにつれて、涙が溢れるようになってしまいました。初めての子どもなので、お腹にいるときからカイには一人っ子のように時間をかけてきた気がします。
私は結婚して渡米した頃、アメリカの生活がすごく苦しかったので、いつもカイの存在に支えられていました。カイも、要領のいい弟達とは違って、学校でうまくいかないことが多く、いつも二人で問題を解決してきました。だから、今はすごく寂しいです。
カイは東京に引っ越してからよく電話をかけてくれたのですが、切ったあと悲しくなってしまうので「もうあんまりかけなくていいよ」と言っちゃいました。子離れできてないですね(笑)。でも、カイが東京生活を思い切り楽しんでくれることが、涙を止める1番の方法だと思っています。
――今後はYouTubeチャンネルの活動など、どんな展望があるのでしょうか。
悠子:子ども達が大きくなったので、そろそろチャンネルのテイストを変えないといけないなと思っています。
次男のコビは、悪戦苦闘しつつも高校の勉強や部活を頑張っていて、自分のインスタグラムのアカウントも始めています。
末っ子のライアンは小6になり、そろそろ思春期に入るので、子どもたちの様子を主軸にするのは難しくなっていくかもしれません。今後は、アメリカで生活をすることを視野に入れつつ、アメリカ人から見た日本の姿を紹介したり、逆に日本のことを海外の人に向けて発信することを考えていきたいと思っています。
<取材・文/都田ミツコ>
都田ミツコ
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。