その瞬間、潤くんは少し首をかしげると「うーん……これ、僕のお誕生日じゃなくて、おばあちゃんのお祭りみたい。恐竜の風船がよかった」と悪気のない表情で言ったそう。
部屋が一瞬シーンと静まり返り、義母も目を丸くし、さっきまで浮かべていた自信満々の笑顔がみるみる固まっていきました。招待されていた親戚も思わず顔を見合わせ、誰も言葉を発せません。
子どもだからこそ、誰にも気を遣わず、本当の気持ちをそのまま口にできたのかもしれません。
「すると夫が『母さん、張り切ってくれたのはありがたいけど、今日は潤が主役だからね』と穏やかに伝えると、周りの親戚もうなずき始めました。義母も気まずそうに視線を落として、『ごめんなさいね。ちょっと張り切りすぎたわ』と謝ってくれたんですよ」
義母は自分が外してしまった飾りを袋から取り出し「これ、もう一度飾ろうか?」と照れ笑いを浮かべたそう。
「すると潤は嬉しそうに頷き、私たち家族みんなで一緒に飾り付けをやり直したんですよね」
壁に恐竜の風船が戻ると、潤くんは満面の笑みを浮かべ「やったー! やっぱりこれがいい!」と大喜びしました。

※画像はイメージです
その笑顔を見た瞬間、杏奈さんは「ようやく本当の誕生日会がスタートした」と心から感じたそう。
少し遠回りにはなりましたが、最後は潤くんらしい笑顔があふれる誕生日会になりました。
「それ以来、義母は潤に恐竜グッズを買ってくるようになりました。やっぱり孫の喜ぶ姿がいちばんだと思ったみたいです」と微笑む杏奈さんなのでした。
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<文・イラスト/鈴木詩子>