そんなある日、義父はテレビCMを見ながら、また隼人くんに向かって「今度はこのおもちゃ買ってやるからな!」と笑顔で言ったそう。
その瞬間、美咲さんは思わず心の中で「お願いだから、もう言わないで」と思いました。
「すると隼人は、少しだけ困ったように笑って『じいじの今度っていつなの?』と小さな声で言ったんですよね。私は思わずハッとしてしまって」
さらに隼人くんは、責めるような口調ではなく、本当に不思議そうな顔で「ぼく、じいじと一緒に遊びたいだけなんだ。おもちゃはなくてもいいから、約束は守ってほしい」と言ったそう。
隼人くんの言葉を聞いた義父は、何も返さず、ただ黙ってうつむいてしまいました。
「するとその数日後、義父は私に『今度の日曜日、隼人を近所の水族館へ連れて行ってもいいか』と自分から連絡してきたんですよ。そんなの初めてなので驚いてしまいましたね」
しかも今回は違いました。当日の朝、義父は約束どおり時間ぴったりに迎えに来ると、隼人くんを連れて近所の水族館へ。
決して有名なテーマパークでも、大きなレジャー施設でもありません。大きな公園の中にある無料の小さな水族館でしたが、隼人くんはとても嬉しそうに一日を過ごしていたそう。
「帰宅した隼人は『じいじとお魚いっぱい見て楽しかったよ!』と満面の笑みで……私もようやく胸のつかえが取れました」

※画像はイメージです
何気なく口にした約束でも、子どもにとっては何日も前から心待ちにする大切な約束です。
「高価なおもちゃや特別なお出かけよりも、子どもにとって一番嬉しいのは、『約束を守ってくれること』なんだと、義父も気づいてくれたのかもしれません」と微笑む美咲さんなのでした。
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<文・イラスト/鈴木詩子>