――原案を務めた著作『タイ移住に挑む、アラフォー崖っぷち女子の苦難』では、ご自身の経験談もふんだんに盛り込まれていました。本書を担当された経緯から、教えていただければと思います。
カワノアユミ(以下、カワノ):最初は移住よりもっと深く、現地の文化により迫るテーマで本にしたいと思ったんです。何度もタイへ行くなかで、現地の面白さは感じていました。それを担当編集の方に相談していたところ「現地でのトラブル、ドタバタ劇の方が面白いんじゃないですか?」と言われて、今回の漫画の原案として参加させていただくことになりました。

今年はパタヤでソンクラーン祭り(水かけ祭り)に参加
――もともと、2005年頃より旅行客としてタイには何度も訪問されていたそうですが、本格的に移住されたのはいつからだったのでしょうか?
カワノ:一時帰国もあったので曖昧ではありますが、2024年末に語学学校に入学して約半年間の学生ビザでタイに渡ったのが一つの転機でした。その後は30日のノービザでの滞在期間を挟み、ライターとして「日本にいないと仕事ができない」という取引先もあったので、タイでの仕事を許されていない取引先を整理しました。現地で本格的に暮らせるようになったのは2025年10月で、ノマドワーカー向けの「DTVビザ」を取得して現在に至ります。

現在の住まいのコンドミニアム(家賃/月8500バーツ=約4万円)
――そもそも、タイへの移住を考えたのはコロナ禍だったと著作で明かしていました。
カワノ:同棲していた彼氏の仕事が忙しくなって帰ってくる時間が減り、独りの時間が増えるにつれて、コロナ禍での仕事減少もあり生活の余裕がなくなってきたんです。コロナ禍で免除されていた税金が一気にのしかかってきて「日本の物価も上がってきたし、住みづらくなってきたな」と考えたときに思い出したのが、タイでした。
当時、海外ではタイが比較的早くコロナ禍での渡航禁止を解除(2022年10月)して、生活費を考えて実家に戻る選択肢もあったんですが「それならタイに長期で住んでみようか」と思ったんです。
他の東南アジアの国々に遊びに行ったこともあったんですが、ビザが一番取りやすかったのがタイだったんです。私が移住を考えはじめた当時、タイではノービザでの滞在期間が60日だったのも、決め手でした。
――日本からタイへの移住。いわば“日本脱出”をはかったカワノさんですが、現地の生活では様々な苦労もあったそうですね。
カワノ:現地のコンドミニアムは1年契約が基本で、ビザがないと契約するのが難しいんです。もっとも苦労したのはやっぱりビザの取得で、私は現地のコーディネート会社に任せました。学生ビザが切れてから「DTVビザ」を取得するまでにあった、ノービザの30日間が一番大変だったと思います。
コンドミニアムが契約できないのはもちろん、学生ビザでの滞在当時に作った銀行口座が強制解約されてしまって、現金で生活するしかなく不便でした。一時帰国後の入国審査でも、きつく問い詰められました。
――著作では、入国審査で紛争地域を取材するジャーナリストだと疑われて、1時間もの詰問をされた経験も明かしていました。
カワノ:ありましたね。入国審査のスペースの端っこで「仕事をしに来たんじゃないのか?」と問い詰められて、ノマドワーカーやリモートワーカーに寛容な国ではありますが、入国管理の厳しさは担当者の気分次第でもあるんです。タイ語を満足に話せず、翻訳アプリに頼っていたら「学生ビザを使いながらも、学校に行っていなかったんじゃないのか?」と疑われました(笑)。
――コンドミニアムの契約では、意外にも日本人が日本人をだますケースがあるそうですね。
カワノ:だまされた話を聞くことは多いです。コンドミニアムで「いいところがあるから紹介しようか」と持ちかけられて、家賃が2万バーツのはずが3万バーツと言われて、紹介した日本人が1万バーツを中抜きした話もあります。
本来、コンドミニアムのフロントで手続きすれば自分でも契約はできるんですが、たいていは面倒臭いのか、不動産屋や誰かに仲介を頼むんです。現地で日本人が仲介するのは資格がなければNGですし、結果として「だまされた」になるんだと思います。私は、中抜きされるのが嫌なのでコンドミニアムのオーナーに直接連絡して契約しました。