Lifestyle
Human

「お母さんになっちゃダメじゃん」息子に言われた42歳漫画家。虐待のトラウマと育児について本人を取材

親の完璧じゃない姿を見せるのも育児

『トラウマのほぐし方』(あらいぴろよ著/藤本昌樹、菊地祐子監修/光文社)――トラウマ後遺症について息子さんにカミングアウトされたと本にありました。息子さんに「(病気なのに)どうして僕を産んだの?」「(トラウマ後遺症の発作により)お母さんでいられないならお母さんになっちゃダメじゃん」と言われたシーンで、胸が張り裂けそうでした。 あらい:もう本当に申し訳ないことをした、と謝ることしかできませんでした。それでもぶつけてくれてありがたかったとも思います。彼は謝るチャンスをくれたのだと感じますから。そしたらもう「私は産みたかったからあなたを産んだ、私のワガママだった」というのを認めるしかないなと。私のエゴでした。もう裏切らないように生きていくから、と伝えさせてもらいました。 ――トラウマ後遺症の治療をしたあらいさんが、育児において心がけていることを教えてください。 あらい:落ち込む日があっても、「この日まで生きていればカウンセリングだから」と、悩んでも答えが出せないものは紙に書き出して蓋ができる容器にしまっておきます。カウンセリングの日になれば解決できるからと。自分一人で答えが出せないことばかりですから、症状であることをきちんと認め専門家に委ねます。 また、息子に対して傷つけるようなことをしてしまったときは、気づいた時点で即座に謝ります。「ごめん、本当に気をつける」みたいな感じで。親の完璧じゃない姿を見せるのも育児だと思うんです。失敗しちゃったからダメな親というわけではなく、「失敗しちゃうこともあるけど、私はこう頑張ります」という姿を見せることが大事かな、と。ただ、その失敗、謝罪が慢性的になってしまうと良くないと思います。

大切な家族がいることと、支援者がいることは別

『トラウマのほぐし方』(あらいぴろよ著/藤本昌樹、菊地祐子監修/光文社)

『トラウマのほぐし方』(あらいぴろよ著/藤本昌樹、菊地祐子監修/光文社)

――あらいさんの考える「母親像」を教えてください。 あらい:母親というのは別に365日ニコニコしている必要はないけど子どもを裏切ってはいけないのだろうな、と最近思います。自分の母親に対しても私に嘘をつかないでほしかったので……。母は「お父さんはひどい人だけど、あなたたちのために離婚をしない」と言っていたのですが、実は母自身が、父親のことが大好きだったんですね。「ひどい人だけど愛しているから、どうしても離れられないの!」と言ってくれていたら、呆れますし見放しますけど「そこまで好きな男に出会えて良かったな!」と私も言えたと思うんですよ。でも、父と離れられない理由を私たち子どものせいにしたことが許せませんでした。 そんな至らなさを近くで見ていたので、私は息子を裏切っちゃいけないなと。 揺れる日はまだまだありますが、人間ですから揺れる日があるわけで、今日は悲しいけど明日は良い日だといいなと適当に言えるような、心身の揺れを恐れないヤジロベーみたいなゆるい感じでいければいいんじゃないかな、と。 ――生きづらさを抱えたまま母になった人や、トラウマ後遺症を抱えている人にメッセージをお願いします。 あらい:大切な家族や子どもがいることと、支援者がいるというのは別の話です。家族だからこそ打ち明けられないものや見せたくない姿もあると思いますので、全てを家族と分かち合えなかったとしてもそこに罪悪感を持たなくていいです。家族がいるのに私はいつまでもウジウジしていてダメなんだと思わないでください。トラウマ後遺症というのは本当に厄介な病気です。虫歯みたいなものでなってしまう人はなってしまう。歯医者に歯を治してもらうようなイメージでゆっくりほぐしていけば大丈夫。誰かに頼るのは怖いかもしれませんが、今は医療が進歩していますし社会も変わってきています。 ……まあ支援者もいろんな人がいるので、良い支援者に出会えないという話も聞きます……。自分に合う支援者をあきらめずに探してほしいです。そこだけ、ファイト! です。 これからますますの発展・周知を祈って、私も精進してまいります。なんかあったら聞いてください。素人ですけど、あなたは一人じゃないです。 <文・取材/姫野桂>
姫野桂
フリーライター。1987年生まれ。著書に『発達障害グレーゾーン』、『私たちは生きづらさを抱えている』、『「生きづらさ」解消ライフハック』がある。Twitter:@himeno_kei
1
2
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ