――大人も病んでますよね。教育関係の人に取材すると、「子どもが不調を抱えている場合、実はたいてい親のほうに問題がある」と言うんです。
南:だいたいそうでしょう。
大人の悩みを聞いていても、かなりの確率で、最後に親との関係に行き着きます。「もしかすると親御さんとの間に…」と振ると号泣し始める人もいるし、70~80代でまだ親への恨みつらみを抱えている人もいる。親子関係は一生に影響を与えますね。
――そんな中で、親は子どもにどう接すればいいのでしょうか。
南:まずは、「子どもは他人」で「わからない」という前提に立つこと。僕の息子は、知的障がいを伴う自閉症でアウトプットができないので、意思がわからない人と付き合う難しさは痛感しています。
でも、障がいがなくても、他人のことはわからないんですよ。「俺は君のことをよくわかってる」と言われると、腹が立つでしょ?「お前ふぜいに何がわかるんだ」って。子どもも同じです。

――「親ができることは2つだけ」とも、本に書いていますね。
南:ええ。
「あなたがいてくれて嬉しい」と伝えること。
経済的に自立するまで衣食住の面倒を見ること。この2つしか親にはできないと、僕は考えています。
親はつい、「あなたのため」と言って、生き方まで指導してしまうんですが、これは危ない。「親の言うことを聞くんだったら愛してあげる」という、“取引”になってしまう。
このお定まりの構図にどっぷりはまって、大人になっても親に縛られて悩んでいる人と、数えきれないぐらい会いました。
子どもを
「導く」んじゃなくて、「味方になる」。親にできるのは、それぐらいですよ。
(以下、後編)
【南直哉(みなみ・じきさい)】
恐山菩提寺院代、霊泉寺住職。1958年長野県生まれ。サラリーマンを経て、1984年に出家得度。曹洞宗大本山・永平寺で約20年間の修行生活を経て、2005年より恐山へ。2018年、『超越と実存』で小林秀雄賞受賞。著書多数。

<文/増田結香 撮影/我妻慶一>