――たいていの親は「勉強しなさい」と言いますよね。
南:あのね、「勉強しなさい」って世界で一番ムダな言葉のひとつですよ。勉強ってのは、
本人がしたいと思うか、しなければヤバいと思わない限り、絶対にしないんです。
だいたい、「勉強しなさい」と言っているあんたは勉強したのか?って話ですよ。親は子どもに何か言う前に、同じ言葉を自分に問うてみたほうがいい。
僕も中学生の頃、全く勉強しませんでした。親は「勉強しろ」と言ったことがないけど、高校受験の前に、父親が真顔でこう言ったんです。
「知り合いの寿司屋が弟子を探しているから、お前、中学出たらそこで修行したらどうだ?」って。大真面目にですよ。
寿司屋が嫌なわけじゃないけど、「やっぱり高校に行かせてください」と頼んで受験勉強を始めました。

――今回唯一の高校生である悠太さん(仮名、17歳、高2)は、通信制高校に通いながらパンクロックバンドをやっていて、音楽の道に進みたいと言っていましたね。
南:彼は、自分が「いつも周囲と噛み合わない」「アウトサイダーだ」と自覚していました。僕もアウトサイダーだからよくわかります。
ご両親が、「普通」とは違う彼を否定しなかったから、彼は居場所を見つけられたんだと思います。
――最後に、この本をどういう人に読んでほしいですか?
南:まず10~20代の若い人ですね。
あと、親世代に読んでもらえたら、対話の仕方のヒントになると嬉しいです。
僕は、様々な悩みを抱えた人と一対一で話すことを30年続けているんですが、他人のことはわからない。子どもだって他人です。わからない前提で、どう共通の土俵を作って話をするか。
ただし、読んでも、役に立つ「正解」は何も書いてないですよ(笑)。
【前編】⇒
「人生で大切なのはお金」と言い切る14歳が、本当は伝えたかったこと――禅僧と10代たちの対話

【南直哉(みなみ・じきさい)】
恐山菩提寺院代、霊泉寺住職。1958年長野県生まれ。サラリーマンを経て、1984年に出家得度。曹洞宗大本山・永平寺で約20年間の修行生活を経て、2005年より恐山へ。2018年、『超越と実存』で小林秀雄賞受賞。著書多数。
<文/増田結香 撮影/我妻慶一>