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乙女おばあちゃんの心意気映画が面白い。バールズ・ビー・アンビシャス!

 皆様もう『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』はご覧になられたでしょうか?(私、花園magazine @vertigonoteはまだです…)昨年末には『みんなで一緒に暮らしたら』もありましたし、4月にはダスティン・ホフマンの初監督作『カルテット 人生のオペラハウス』も公開され、なんだか「こういう映画最近多い…?」と劇場予告を見て感じられてる方も多いのではないでしょうか。

マリーゴールド そう、これらの作品は共通して「余生」映画であり、おばあちゃんたちが「だからこそ、私は自分の思うように生きるのだ!」と可愛くかつある意味では 図々しく、人生の歓びを炸裂させる映画だということなのです。老女って、時に少女に大変似ている、と思うんですよね。一度決めたら絶対引かない意地っ張りぶりが。そう、その姿はまさに、城夏子さんがエッセイ内で自称されていた“婆ル”(婆ちゃん+ガール)。こうした心意気あふれる映画のなかの婆ルたちが、 私は大好きです。私自身がやたらと逞しいサイボーグみたいな祖母に育てられたおばあちゃん子ということもたぶん関係しているのですが。

 というわけで、本日は脇役/主役にかかわらず、私のお気に入りのスーパー乙女おばあちゃんが登場する映画をご紹介していきましょう。


「ペルセポリス」



ペルセポリス 縦糸に好奇心旺盛なお調子者で暴れん坊のちょっと意地悪なイランの女の子マルジの成長譚を、横糸に1978年から2000年代までの激動の現代イラ ン史をかけて織り上げられたタペストリー。8割がたモノクロームのアニメーションで綴られる豊かなイメージとともに、胆の据わったハードボイルド女子魂が 炸裂している『ペルセポリス』は私の大好きな映画。

 この映画でブルジョアかつリベラルな家庭で育ちながらも、時代に翻弄されて国を離れざるをえなくなったがゆえに「どこにいっても異邦人」になってし まう主人公マルジに大きな影響を与えるのは、人生の、女性の大先輩であるおばあちゃん。

 もうこのおばあちゃんが本当に素晴らしいんですよ!

“毎朝摘んだジャスミンの花をブラジャーにつめてイイ匂いをさせてる”最高の乙女なおばあちゃんのきっぱりとした名言の数々は全部メモをとりたいくらい素敵です。

「いいかい、これからお前を傷つける者たちもたくさんいるだろうけど、そんなときは相手が愚かなんだと思うんだよ、怒りや復讐は最低だからね、相手と同じフィールドに立っちゃいけない」

「離婚なんてたいしたことじゃないよ、一回目は予行演習だったと思えばいい」

「恐れが人の良心を奪う。恐れが人の勇気を奪うんだ。けれどお前は恐れなかった。私の誇りだよ」

 主人公に受け継がれていくこのスーパークールかつ愛にあふれた人生哲学、他人に規定されず自分自身の人生を貫く誇りは、今も私の指針になっています。


「ハロルドとモード 少年は虹を渡る」



ハロルドとモード あるお葬式の日、自殺ごっこに夢中になっている孤独な青年ハロルドは日々をパワフルにパンクに過ごす老婆モードと出会う。気付けば彼女と一緒に過ごすようになり、毎日が少しずつ楽しくなっていくハロルド。やがて芽生える恋。でも…

 言わずと知れた美しくロマンティックで風変わりなラブストーリー。現実の世界に折り合いがつけ られないハロルドと、その「折り合いのつかなさ含めて世界を愛する」モードおばあちゃん。死の気配を濃厚に漂わせたブラックな笑い、ファンタジーなだけではなくあくまでもビビッドな恋の描出。時折生々しく性的な印象を残すのもポイント。次々と予想を越える展開を見せ、予想より素敵な台詞が飛び出します。

 この奇妙な生命讃歌が成功したのはキュートなバッド・コートの力はもちろんだけど、何よりパンクなメリー・ポピンズのようなお婆ちゃんルース・ゴードンのチャームの力。あの魅力はいったいどこからくるのでしょうね!

 意味のない生のなかで死の夢を見て、周囲に邪険にされればされるほど自己存在を主張するために自殺遊びを試みていたモラトリアム青年ハロルド。その 彼がラストシークエンスで見せた本当に本当に懸命な姿には泣くしかありませんでした。生きていく幸福に出会えたからこそ、生きていく悲しみに涙をこぼすこ とができる…それを鮮やかなかたちで教えてくれたモードは、映画史上に残る「婆ル」ではないでしょうか。


「あしたのパスタはアルデンテ」



あしたのパスタは 老舗パスタ会社を継ぐ兄アントニオの社長就任を祝う晩餐会に出席するため、南イタリアに帰郷したトンマーゾ。彼はその夜、家族に黙ってきたことを兄に告白す る。家業を継ぐ気はなく小説家を目指していること、そして自分がゲイだということ。一族が集結する晩餐会で、ついに覚悟を決めたトンマーゾが告白しようと した矢先、なんと兄が同じことを先に言い始めて……!

 という予告からは陽気な家族コメディなのですが、実際は結構シリアスな、色んな「事情」についての“カムアウト”ストーリー。「他人からどう見えるか」の 糸を断ち切れないそれぞれの登場人物の“過去の事情”のしんどさに何度かすごく胸が苦しくなった映画です。「誰にも秘密があって」を象徴するの は……ああ! おばあさま!!!

 ただ全ての事実を表に出してしまえばよいというものでもなく、大事なのは「あなたがどう生きるかということ」。おばあちゃんが万感を込めて呟く「普通なんて嫌な言葉ね」はずっと心に刻んでおきたい名台詞。「だれかのため」ではなく「わたしのため」に生きること。わかっていても難しい、そのような生き 方をどんなに望んでも、私にとってはなかなかそれは叶わない、勇気がないといえばそれまでなのだけれど。だからこそ、凛と背筋を伸ばしたお婆さまの大反逆 と、その向こう側で幻視された祝祭はせつなくもとても美しかったのです。 <TEXT/花園magazine @vertigonote>

★この記事の全文は⇒花園magazineにて http://hanazonomagazine.wordpress.com/

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