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「心から愛せる人が一人いれば怖くない」NYで成功した女性・アケミさんに聞く

マイケル・ジャクソンとの出会い

 トランプタワーには3年住みましたが、運命的な出会いもありました。  普段だと居住者専用の入り口にはリムジンが並んでいるのですが、94年のある日、帰宅すると一台だけボロボロの黒いワゴン車が停車している。そこから、人目を忍んでトランプタワーの中にすっと入っていく人がいました。 Trump-Tower ドアの前には警備員がいます。人が一人通れるだけの小さなドアを抜けると、コンシェルジュの奥に居住者用のエレベーターが4基あって各々にエレベーターボーイがいる。深夜で混む時間帯でもないのに行列が出来ていたのですが、親しかったボーイが「アケミ、Come Come!」と声を掛けて来た。  いそいで一番奥のエレベーターに飛び乗ると背後に人影を感じたのです。たった一人の人しか乗せていなくて、他の人達は外で並んでいる。どうして…?  金色のエレベーター内で、鏡のように磨かれたドアに反射して背後の人物がおぼろげに見えました。マイケル・ジャクソンでした。のちに聞くと、リサ・プレスリーと別居中のマイケルは身を隠すようにトランプタワーに引っ越してきたと言います。ボロボロのワゴン車はパパラッチを欺くため、あえて古い車を選んだのでしょうか。  エレベーターが上昇中、マイケルは終始無言、私も後ろを振り向きませんでした。60階で私が先に降りると、私とボーイの会話に聞き耳を立てていたマイケルが、ボーイにこんな事を聞いたそうです。 「彼女は何をしている人?」 「日本人のファッションデザイナーです」 「彼女のデザインした洋服が一度見てみたい」  ボーイからリクエストされプレス資料を手渡すと「シャツを作って欲しい」と言われて、それから2年間、マイケルがプライベートで着る洋服を手掛けるようになったのです。  ロイが「トランプタワーに住みたい」と言わなければ、マイケルとの出会いはなかったでしょう。

誰か一人でも応援してくれる人がいれば…

 私は人一倍強い女性に見られがちですが、それは心から信頼できる人がそばにいてくれるという前提のうえです。誰か一人でも応援してくれるのなら、それがエネルギーになり突き進める。  ロイは大切なすべてのパートナーでした。それだけに彼が亡くなった時、私は同時にすべてを失い、絶望感と喪失感で虚脱状態になって25年ぶりに母国日本に帰国したのです。
AKEMI S. MILLER BEAUTY STUDIO(大阪)

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 帰国後、不自然に感じたのは、中年の独身女性でパートナーを持たない人がとても多いという事実です。私の教室にいる未婚の生徒でも、10人中7~8人はパートナーがいません。  日本の社会が女性の若さを重視しすぎるせいもあるでしょう。でも彼女たちの考え方が、チャンスを逃しているようにも感じます。「あの人、どう思う?」という第三者の目線ばかりを気にして、肝心の“自分にとってどうなのか”を最初に考えない。もったいないですよね。  恋人や夫でなくても、とても大切な相手がいれば人は強くなれます。自分のためだけではなく、あの人のためにも頑張れる――そう思えるからです。 ―アケミS.ミラーさんインタビュー Vol.2― 【アケミS.ミラー】 兵庫県生まれ。京都できものを学び、79年から東京で“曽根あけみ”として活動。 1989年にニューヨークに渡り、AKEMI STUDIOを設立。ニューヨークコレクションのデザイナーとして活躍。米国人の夫の死をきっかけに2013年に日本に帰国し、大阪市でフェイスデザインのメイクスクール「AKEMI S. MILLER BEAUTY STUDIO」を開校。 <TEXT、現在の撮影/studio KEIF・加藤慶>
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