みんな同じプチプラ服でいいのかな?手仕事感を取り入れる/ロエベに学ぶ
【モードをリアルに着る! Vol.7/小林直子】
2017年11月、ロエベから発表されたカプセルコレクションは、イギリス人のアーチストでありデザイナーでもあるウィリアム・モリス(1834-1896年)の、「ハニーサックル」「いちご泥棒」「アカンサス」という名前のついた壁紙やテキスタイルのプリントを使ったものでした。
発表されたのはこれらのプリントを使ったバッグや小物、ウエア。現在のロエベのクリエイティブ・ディレクターはイギリス人のジョナサン・アンダーソン。
ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館にはモリスルームと呼ばれるモリスの壁紙を使った一室がありますし、それだけではなく、実際にモリスが住んでいた家が現在、ナショナルトラストによって管理され、見学可能ですから、ジョナサン・アンダーソンがモリスのデザインを使うというのはさほど難しいことではないはず。
ではなぜそれが今なのか、ということです。
ファッションには流行があります。今より少し前はチビTとスキ二ージーンズに代表されるようなタイトなシルエット、装飾なしのミニマムなデザインが主流でした。
その流れの潮目が変わってきたのが2012から2013年にかけて。シルエットがタイトなものからビッグなものへ、装飾なしから装飾過多へと変わるとき、多くのデザイナーが参照したのが、ウィリアム・モリスが19世紀後半に提唱したアーツ・アンド・クラフツ運動でした。
効率重視の無味乾燥な大量生産品にアンチを唱えたウィリアム・モリスは、手仕事の復活、そして生活に美を取り入れることを提唱。その態度が21世紀の今の時代の気分にぴったりマッチしたのです。
この流行が始まる以前、ファッション界では、ファストファッションに代表されるような、凝った装飾もなし、手仕事もなし、美しさより効率、そしていかに安価かという点が優先され、ファッションの単なる工業製品化が進みました。
それにうんざりしたデザイナーたち、例えばドリス・ヴァン・ノッテンなどがいち早くこのアーツ・アンド・クラフツ運動にインスパイアされたスタイルを取り入れました。
ただ、2012年、2013年の時点ではまだまだそれは流行の萌芽。流行に敏感で、時代の空気をいち早く察知するごく一部の人たちを除いては、そんなスタイルは考えてもいない時期でしたが、それから5年ほどが経過した今、だんだんと大衆レベルまでその気分は広まってきました。

ハニーサックル柄のバッグ ロエベ「T-Pouch Honeysuckle Bag Multicolor」¥130,000 ロエベ・オンラインショップより http://www.loewe.com/jap/ja/home
なぜ今、ウィリアム・モリスなのか?

ヴィクトリア&アルバート博物館のモリスルーム

ウィリアム・モリス

ドリス・ヴァン・ノッテンの創作の謎に迫るドキュメンタリー映画
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