夫婦別姓を望んで婚姻届を出したら…4組が裁判を起こしたワケ
「結婚した夫婦の名字を同じものにしないといけない」という日本の法律を変えるべく、2018年3月14日、新たに裁判が起こされました。
東京と広島の事実婚カップル4組が、東京家裁と広島家裁に、別氏での婚姻届の受理を役所に命じるよう審判を申し立てたのです。
そこで、この裁判の弁護団のひとり、打越さく良弁護士に話を聞きました。
「まず確認したいのは、私たちが求めているのは『選択的夫婦別姓』です。従来通り、夫婦で同じ姓を名乗りたければそれを選べばいいし、個人の姓を名乗りたいなら別にすればいいという『選択』ができるようにしたいんです。個人の自由を尊重してください、というお願いです」(打越弁護士、以下同)
もちろん、結婚して姓が変わることで生まれ変わった気持ちになれたり、パートナーと一体になった幸福感を得られる人もいるでしょう。その気持ちは否定しません、とても幸せなことだと思います。
それと同じように、姓を変えることで不便を感じたり、アイデンティティの喪失と感じる人もいるのです。みんなが幸せになるための「選択的夫婦別姓」というわけです。
3月14日に提訴した原告は、別姓を望んでいる事実婚夫婦たちです。
「原告は共働き夫婦、夫が会社員で妻はパートの夫婦など4組です。
みなさん事前に、役所に夫婦別姓で婚姻届を出しています。これは現在の民法では認められないため、婚姻届自体を受け入れてもらえません。その『不受理』は違法じゃないか、と問う裁判です」
婚姻届には、夫婦のどちらの姓を使うか、チェックを入れて選ぶ項目があります。「夫の氏」「妻の氏」の両方にチェックを入れて提出したとのこと。
これに対して「不受理証明書」が送られてきます。その理由は「夫婦別姓が認められないため」となるはずです。それを持って、家庭裁判所に「婚姻届を受理するよう役所に命令してください」という裁判を起こすのです。
「この不受理は、憲法14条と24条(注)に違反するというのが、私たちの論点です。
14条1項は、法の下の平等を定めており、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止しています。例えば近親婚とか重婚といったことの禁止は、国家による法的統制として理解できますよね。しかし、別姓を希望するカップルを同姓を希望するカップルとは別に扱うのは、合理的な根拠があるといえないでしょう。
別姓を選択したために法律婚が認められない夫婦は、配偶者控除などの税金の優遇も、相続税も、共同親権も、手に入れることができません。差別的取扱いにより、非常に重大な不利益を被っているのです。
現状、夫婦のうち約96%もの女性が姓を変えています。これについては、最高裁大法廷(2015年12月)で判決の少数意見が『女性の社会的経済的な立場の弱さ、家庭生活における立場の弱さ、種々の事実上の圧力など様々な要因のもたらすところであるといえるのであって、夫の氏を称することが妻の意思に基づくものであるとしても、その意思決定の過程に現実の不平等と力関係が作用しているのである』と正確に分析しています。
選択肢のない夫婦同姓制は、24条の個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超えているといえるでしょう。この点も、主張します」
今後、国家賠償請求も予定しているそうです。「え、賠償? お金がほしいの?」と思われるでしょうか。
「お金が目的ではありません。『お前間違ってるよ』と言うだけでは裁判を起こせないため、それがどれほどの不利益をもたらすかを裁判所に訴えるための手段なのです」
「同姓でも別姓でも自由に選べる」世の中が目標
別姓を望んだら婚姻届が受理されなかった4組


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