
吉村さん自身も数々の嫌な目にあってきたそう。彼女は平日の昼は美大に、土日はカルチャーセンターに行って仕事をしていました。美大ではそんなに酷い目には遭っていないようですがカルチャーセンターでは…。
「私は写真モデルの経験は無く、絵画モデル一本だったのですが…モデル台の真正面に陣取って、下から見上げるような形で…小さなメモ帳にボールペンで陰毛の形だけを描いているおじさんがいて…心底気持ち悪かったですね。本当にずっと私の股間だけを見ているんですよ…あぁ思い出すだけで鳥肌が…」
しかも吉村さんがトイレに立つと、そのおじさんはすかさずついて来て、その絵をニヤつきながら見せてくるので…トイレに行くのも怖くなってしまったんだとか。
「そんなおじさんも、世間からは“仕事帰りにカルチャーセンターの絵画教室に通う芸術に関心の高い男性”と思われているのでしょうか? 私には、芸術という隠れ蓑(みの)を着たセクハラにしか思えませんでした」
カルチャーセンターなら、全く美術に関心が無くても数千円で女の裸が堂々と見られる…と考えて来るふとどきなオッサンが混じっていても不思議はありません。そして、吉村さんが、中でも1番多く受けたセクハラは…。
更衣室への侵入が多発。「どうせ裸になるんだからいいじゃないか」暴言も

「私服から休憩着に着替える時に更衣室を借りるのですが、結構な確率で勝手におじさんが入ってくるんですよ。注意をすると『どうせ裸になるんだからいいじゃないか』ってヘラヘラ言ってくるんですよね」
女性達に助けを求めても、もめ事になるのが嫌なようで『あら、ごめんなさいね~』位の軽いノリで済ませられてしまう事が多かったとか。
「もう誰も信じられないと思い、それから私はトイレで着替えるようになりました。トイレの中だけが安心出来る場所でしたね…本当に人権を踏みにじられるってこういう事を言うんだろなって思いました…」
最終的に、セクハラに耐えられなくなり美術モデルを辞めた吉村さんは当時の事をこう振り返ります。
「セクハラやパワハラに遭ってしまった時に“でも、楽な仕事なんて無いんだから頑張らないと”と我慢してしまう真面目なタイプのモデルさんが、結局、円形脱毛症になってしまったり鬱病になってしまったりしていましたね。
私も肩ひじ張って自分は強いと思い込んでこの仕事をしばらく続けていましたが、実際はボロボロに傷ついていました。今思えば、1番最初に更衣室に勝手に入ってきたおじさんに思いっきりキレて、すぐに辞めれば良かったんだと思います。我慢してもいい事なんて無いですよ、本当に…」
吉村さんは、もう2度と美術モデルだけはやりたくないそうです。
<TEXT/鈴木詩子&「女子SPA!」編集部取材班>
【鈴木詩子(すずきしいこ)】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
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