
『カーネーション』DVD
他に、「子」との関係性を語る上で忘れてはいけないのが『カーネーション』。
娘たちは、圧倒的な情熱を持つ母・糸子(尾野真千子)の背中を見て、追いかけて、「お母ちゃんに認められたい」という一心で育ちました。そして、3人が母と同じ洋裁の道に進み、後に世界的なデザイナーとして羽ばたいていきます。
しかし、娘たちが活躍する一方で糸子は年老いていき、娘たちが送ってくるデザイン画を模写するという、貪欲さや老いの寂しさを見せます。挙げ句、骨折したことから、娘たちに引退を勧められる展開もありました。
「子」が活躍しているかわりに、終盤に迷走を見せるのは、ヤンキーとなった長女の娘、つまり孫。そして、商店街のアホぼんたち。しかし、そうした頼りない面々もボーイフレンドとして従え、自身の死後も慕われ続ける、みんなの「母」になっていくのでした。
朝ドラにおいて、ワクワク感や憧れを抱かせてくれるのは、当然ながら、物語を牽引するエネルギッシュな主人公や、主人公夫妻です。しかし、物語の熱量自体はやや低下するものの、終盤に登場する「偉大な親に劣等感を抱いてしまう子や弟子」のほうに共感を覚えたり、応援したい気持ちを持ったりする視聴者もけっこういるかもしれません。
ちなみに、『まんぷく』にはもう一人、「外国人への恋に破れた長女」と、姉の夫で画家の忠彦さんのもとを出入りする「創作のために恋をしようと必死な弟子」が登場しています。
仕事のことになると周りが一切見えなくなる集中力を持つ「天才」たちの周りにいる「迷える子羊たち」を見守るのも、朝ドラ終盤の楽しみなのです。
<文/田幸和歌子>
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