本書の至る箇所で警告されているのが、「
下心を感じさせてはいけない」ということ。

でも確かに、会社内で好感触の男性をゲットしているのは、ノーマークの女性ではないでしょうか。決して目立つタイプでもない、地味だけど清楚な女性がいつの間にか彼を……、という具合に素知らぬ顔で女性全員の度肝を抜くという。本書を読み進めるうちに、賢い女性は虎視眈々とねらいを定めていくんだな、と思い知りました。
そう、本書では好きになる、のではなく“好きにならせる”ために時間をかけて自分を磨き、彼の手に届くか届かないかの距離を保ち、じわりと攻めていくのです。「
好きにさせていくステップは、いきなり恋人を目指すと失敗します」という、これまた厳しい忠告どおり、焦ってはいけないのです。
世間一般に、男性よりは女性のほうが圧倒的に恋愛体質というか恋愛至上主義者が多いです。ゆえに、恋愛に対して温度差が異なるのは当然。女性にとってゆっくりすぎるくらいのペースで、ちょうどいいのかもしれません。
「
彼があなたを好きになるには、居心地のよさや魅力を、いつの間にか警戒心なく感じ、いつの間にかあなたとの楽しい時間を過ごしていくうちに、徐々に興味を抱かせるという必要があります」と本書。
直接的に迫るよりは、彼の好みに自分を変えていき、常に彼の視界に入り、じわじわと彼を浸食していくといった、彼のペースに合わせた作戦が功を奏すのです。キーワードは「いつの間にか」。いつの間にか彼をとりこにし、いつの間にか彼に告白されていた、というのが理想でしょう。
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小説家・森美樹のブックレビュー―
<文/森美樹>
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小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『
主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『
母親病』(新潮社)、『
神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。
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