エッセイ漫画はストーリー漫画と違って、作家本人に起こった日常を描いています。漫画を完成させるにあたって、編集者としてどのようなアドバイスをしているのでしょう。
「エッセイ漫画の面白さは、“実録”と“実感”にあります。フィクション的に盛るのではなく、あくまでリアルに描くのが重要なので、ネタ出しのときは起こった出来事の5W1H、誰がいつどこで何をしたかを、著者さんに細かくお話しいただきます。
あとは、
面白い出来事はそれだけでももちろん面白いのですが、それを受けて著者さんがどう感じたか、どう変化したか、感想を必ず付け加えていただくようお願いしています。その“実感”が加わって初めて、エッセイ漫画として成立すると思っています。……ただつづ井さんはもう最初期から完成されていたので、私はただただつづ井さんの近況をお聞きして笑わせていただいている、ということも多いです(笑)」
「結婚・恋愛はして当然」という価値観をやわらげたい
また、つづ井さんのnoteでの記事では、いくら楽しい日常を描いても「男なんていらない!という強がりを感じる」「無理してて痛々しい」という感想がよせられることもある、と書かれていました。エッセイ漫画で、ハッピーなことをハッピーだと表現することに難しさはあるのでしょうか。
「どれだけ著者さんが『
楽しい~~~!!!』と感じることをたくさん描いても、それが作品になって読者の手元に届いたときは、その読者さんの主観によって受け取り方が変わってしまうことはあると思います。特に、『結婚・恋愛はして当然』という未だに強く残っている価値観・“フィルター”を通して見ると、『
独身なのだから、こんな楽しいはずはない!』と反発が生じてしまうこともあるのかもしれません。
難しいことですが、著者さんのお側にいる一編集者としては、著者さんの“ハッピー”がそのまま“ハッピー”として、すこしでも読者さんに伝わるよう頑張らなければいけないな…と感じますし、そうやって生まれた『裸一貫! つづ井さん』のような作品が、『結婚・恋愛』を絶対とする価値観を少しずつでもやわらげていってくれたらいいな、と願っています」