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ストーカー被害に悩んだ作家が語る「ストーカーという病気」から逃れるには

相手が変だなと思ったところで打ち出すのでは手遅れです(内澤)

小早川:遅い。変だと思ったときにはもうハマられている可能性がある。最初に打ち出さないと、ダメ。好きになった人に対しても、自分が大切にしていることを最初に言っておくべきです。
ストーカー

写真はイメージです

内澤:それでは会社の同僚や部下などから被害相談をされたら何ができるでしょうか。 小早川:相手との交渉に当たるのはやめたほうがいいです。相手がストーカーという病気だということをわきまえていないと、病気の人はますます悪化する可能性が高い。ストーカーのライバル意識を高じさせるかもしれないし。間に立つなら保護者的な立場の年長者がいいと思います。30~40代の男性が相談を受けたら、裏側からの支援に回ってあげてほしい。支援機関を調べ、警察や弁護士に相談に行くときに付き添うとか、証拠を保存する方法を教えたり防犯カメラをつけてあげるとか。 内澤:恐怖で混乱していると、判断力も鈍り、警察とのやりとりも疲れます。相手方の弁護士から示談を提示されたときも冷静な判断ができませんでした。被害届を出すときに相手に知られてしまうのが怖くて取り下げたくもなりました。 小早川:そこは周りが支えてあげてほしい。グループで通勤通学に付き添ったりとか。できることはたくさんあります。まずは話を聞いてあげること。たいしたことないよ、なんて気休めはご法度。一緒に頑張っていこうよと励ますのです。親身に聞くことが大事。  ストーカーは病気なので、相手に対する執着が自分の努力では止まらなくて本人も苦しんでいるのです。ストーカーに対応するとき、それを治してあげないといけないという視点が被害者の安全のためにも必要なのです。  大半のストーカーは、カウンセリングなどで気持ちを吐き出させてあげたり正しい情報を提供することで、立ち直っていけます。  けれど、全体の5%程度いる重篤なストーカーには治療が必要です。現時点の司法ではストーカーに治療命令は出ませんが、それでも私は家族や弁護士と協力して2014年から20人以上のストーカーを治療に繋げ、ほぼ全員が社会復帰しました。条件反射制御法という治療法です。入院が必要で、治療機関も少ない状況ですが、大変高い効果を上げています。  罰するだけでなく、ストーカー全員に適切な医療が提供される仕組みづくりが待たれるところです。

ストーカーの心理レベルでの危険度と対応

●ストーカーという疾患 ①ポイズン:脅迫・暴力住居侵入・名誉毀損など →存在そのものが毒。直ちに避難・隔離が必要 ●ストーカーという病態 ②デインジャー:批判・攻撃的な文句・待ち伏せなど →危険度が高く第三者の介入など手を打つ必要がある ③リスク:やり直したいなど →危険になる可能性がある。リスク管理が必要  加害者の心理的危険度は3つに分けられる。リスクは辛い気持ちをわかってほしいと頼み込む段階。デインジャーは自分を拒否する被害者に文句や批判をする段階。ポイズンは武器の用意や暴言を吐く段階(『ストーカー「普通の人」がなぜ豹変するのか』より) 【小早川明子氏】 心理カウンセラー。著書に『ストーカー「普通の人」がなぜ豹変するのか』(中央公論新社)、『「ストーカー」は何を考えているか』(新潮社)など 【内澤旬子氏】 文筆家・イラストレーター。著書に『漂うままに島に着き』(朝日新聞出版)、『ストーカーとの七○○日戦争』(文藝春秋)、『着せる女』(本の雑誌社)など <取材・文/内澤旬子 撮影/八杉和興(週刊SPA!)>
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